
原理原則に基づいた野球にレベルアップ
古豪復活に向けて意気揚々
歴史ある古豪の富士宮北。力はあるものの、本番になかなか実力を発揮できず足踏みをしている。残る夏へ意識を集中させる。(取材・栗山司)
■伝統校の強みを生かして
広大な校内に両翼93メートル中堅122メートルの専用球場を持つ。その左翼後方に建つ石碑の教えを胸に刻み、1日の練習が始まる。「今、ここで頑張らずして、いつどこで頑張る!? 自分の力の限りを尽くし、精神の限りを尽くして頑張れ!!」。1980年、チームを甲子園に導いた大石義春監督の言葉だ。
あれから45年。古豪復活、そして3度目の甲子園出場を目標に掲げ、チーム改革が進んでいる。昨年4月より指揮をとる大勝良則監督はこう力を込める。「良き伝統を生かしながら、新しい富士宮北高校の野球部を築き上げていきたい」。
■新たな取り組みで強化
今年のチームは県の上位に食い込める能力を秘める。だが、昨秋はまさかの初戦コールド負け。大会前の練習試合は負けなしで、自信を持って臨んだものの、ミスの連鎖を止めることができなかった。「大会になると別のチームになってしまう。力があるのになぜだろう」と大勝監督は毎朝、各選手と10分間の面接を行いながら、選手の内面に向き合い、意識改革を図った。「感覚やセンスでプレーしているところが多かったので、原理原則に則って物事を考えられるようになってほしかった」
さらに、選手一人ひとりに責任感を持たせるため、企業のような組織図を導入し、それぞれに役割を与えた。主将を総括役とし、ディフェンス、オフェンス、トレーニングなどの各部門に課長を配置した。主将の望月琥太朗(3年=捕手)は「役割がついたことで、少しずつ一人ひとりが考えられるようなチームになってきました」とチームの成長を感じとっている。
■勝負の夏に向かって
オフシーズンは体力強化にも着手した。土台を作り上げることで、パフォーマンスアップにつなげていった。エースの加藤柚吏(3年)にいたっては球速を大幅に伸ばし、12月末には145キロを計測。そして3月上旬、木更津総合(千葉)との練習試合では加藤の力投が光り、互角の戦いを演じた。
迎えた春の初戦、強豪・御殿場西との一戦。2回に先制点を奪い、幸先の良いスタートを切った。しかし、中盤に逆転を許して、1対5で敗退。秋に続き、県大会出場を逃した。望月主将は現実を受け止め、気を引き締める。「強豪チームと比べると、まだ元気も足りないですし、技術面で劣るところがあります。全員で気を引き締め、練習に取り組んでいく必要があると感じました」
一歩ずつ着実に前進を続けている富士宮北。選手たちは前を向き、勝負の夏へと歩みを進める。