「昭和」と「令和」のハイブリッド野球
戦国・神奈川を勝ち抜く新たなチャレンジ

2011年春、2018年秋にベスト4へ進出するなど戦国・神奈川で実績を残す県立実力校・厚木北。森山純一監督就任4年目、チームは新たなチャレンジに乗り出していく。

■夏は無念の初戦敗退

2024年夏、厚木北は初戦の2回戦で柏陽に6対7でサヨナラ負けを喫した。3年生を中心に練習に夢中で取り組んできたチーム。勝ち上がる自信はあった。柏陽戦序盤は劣勢だったものの中盤に巻き返して7回を終えて6対4。あとはゲームをクローズするだけだった。しかし、8回に2失点して同点にされると、相手の流れを断ち切ることができずに9回裏にサヨナラ負け。選手たちが培ってきたすべての力を出し切ることができずに、校歌を歌えず敗退となった。2021年秋に就任した森山監督にとって3度目の夏大会だったが、初の初戦敗退。2023年は夏3勝を挙げて4回戦へ進出し、手応えをつかんでいた中での黒星。指導陣のショックは小さくなかった。

■神奈川を勝ち上がるための挑戦

夏大会後、森山監督と福冨洋祐部長が夏の反省と新チームの指導方針を話し合った。その中で福冨部長は、選手主体のチームマネジメントを提言した。チームは伝統的に、規律を重視したトップダウン式だった。森山監督就任後も伝統を継承。チームレベル、選手の気質的にも機能してきた。2023年夏のベスト32進出はその成果の一つだった。福冨部長は「新チームの2年生は野球が本当に好きな選手たち。3年生の頑張りをみてきた生徒なので、新しい挑戦をする価値があると思いました」と話す。新チームから、選手たちがメニューを考案し指導者に提出。タイムマネジメントも選手が管轄している。森山監督は「これまでは『昭和の野球』だったかもしれませんがチームとしての土台ができたと感じています。この世代からは、神奈川を勝ち上がるために『昭和』と『令和』を融合していきたいと思います」と新マネジメントに舵を切った。

■チームスローガンは「仕掛ける」

指導陣は、2年生主体のAチームと、1年生主体のBチームに分けた。入学したばかりの1年生にすべてを預けるには荷が重すぎる。2年生は主体的に練習に取り組み、1年生は段階的に自主練習を導入していくという。福富優斗主将(2年=内野手)、岸星輝主務(2年)、佐々木光道具係(2年)らが昼休みに集まって練習メニューや計画を立てている。チームスローガンは「仕掛ける」。グラウンド内外で、受け身ではなく、能動的に行動していく覚悟を示す。今季のチームはエース格の見井田佳吾(2年)、鈴木皓大(2年)の投手陣、牧方柊人(2年=外野手)を軸にした打撃陣など攻守のバランスが整う。秋はケガ離脱の影響で戦力が整わずに結果をつかめなかったが、春・夏へ向けて士気は高まる。福富主将は「自分たちで考えることで意識が変わり、責任感が芽生えてきました。『仕掛ける』姿勢をみせて新しい歴史を作っていきたいと思います」と胸を張る。厚木北は「昭和」と「令和」のハイブリッドで栄光をつかみ取る。

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