【葛飾野】 「文武生活三刀流」

今夏の東東京大会ベスト16進出
下町から目指す「遥かなる甲子園」

 下町の雄・葛飾野。今夏の東東京大会で進撃を見せてベスト16進出を果たした。新チームの選手たちは先輩たちの結果を超えるべく一丸となっている。(取材・松井裕一)

■今夏は修徳に勝利し16強へ進出  

葛飾区亀有を舞台に甲子園を目指す葛飾野。チームは東東京で力強い戦いを見せると共に、個性豊かな選手を輩出。昨年のプロ野球ドラフト会議で中日から1位指名を受けて入団した上武大・ブライト健太は、葛飾野OBだ。下町のチームは活気付いている。  前チームは、昨秋に国士舘、今春は雪谷にブロック予選初戦で敗退。春予選後、主将の三澤青大(3年)はブレずに目標を語った。「都立校初の甲子園1勝」。迎えた夏の東東京大会は、4回戦ではシード修徳を撃破するなど10年ぶりの16強進出を果たした。現主将の倉持柊真(2年=外野手)は振り返る。「(所在地が同じ葛飾区の)修徳戦の前日に『葛飾区の歴史を塗り替えよう!』と全員で意思統一ができました」。才野秀樹監督は「修徳高校に勝てたことは、今後のチームにとって、すごく大きい。やればできるということが実感できたと思います」と語る。

■小山台で甲子園を経験した指揮官  

才野監督は、千葉の拓大紅陵出身。高校1年冬にマネジャーに転身し、その後、U-18日本代表監督も務めた故・小枝守氏の下、3年時は飯田哲也(元ヤクルトほか)、佐藤幸彦(元ロッテ)らを擁し、春夏連続で甲子園に出場。秋・春・夏の県大会、秋・春の関東大会を制して県・関東の公式戦は無敗。“東の横綱”と評された代をチーフ・マネジャーとして支えた。  「小枝監督のように甲子園を目指したい」と高校の指導者となり、中学校教諭を経て紅葉川監督、桜修館助監督などを務めた。小山台の助監督時代は福嶋正信監督らと共に、右腕・伊藤優輔(現巨人)を軸に、2014年春の甲子園初出場に貢献した。そして葛飾野指揮官となった今は、福嶋監督から学んだ経験を生かした指導を行っている。

■「勉強」「野球」「生活」を全力実践  

部員には「勉強」「野球」「(帰宅後の)生活」のすべてに全力で取り組む「文武生活三刀流」を実践させている。「彼らが一番苦手なことは勉強です。苦手なことを継続することにより、自信や心の強さにつながる。大会の重圧の中で実力を発揮するためには、野球の練習だけでは培えないと考えています」と説く。小山台での経験から「野球日誌」も取り入れる。毎日、日誌を記入させてチームの「グループLINE」で共有をはかっている。チームメイトを理解し、自分の心と向き合うことが一番の狙いという。  現チームは今秋、ブロック予選で敗れて都大会出場を逃したが、先輩たちが残してくれた財産を糧に、意識高くトレーニングに励んでいる。倉持主将は「夏16強に驚いている人はまだいると思います。葛飾野が本当に強くなっていることを来年の春・夏の大会で見せたい」と気持ちを込める。チームは、「文武生活三刀流」を拠り所にして突き進む。都立校初の甲子園1勝へ向けて――。

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