
春夏4度の甲子園出場の伝統校
1923年夏以来102年ぶりの聖地へ
2013年春の選抜出場など、春夏4度の甲子園出場実績を持つ宇都宮商。昨春関東大会出場を果たしたチームには、伝統校復活の予感が漂っている。
■昨春県大会で準優勝し関東大会へ
創部100年以上の長い歴史を持つ宇都宮商は、昨春の県大会で快進撃を見せた。ピッチャーを中心とした守備が軸となるチームは、準々決勝で作新学院に2対1で競り勝つと、準決勝で文星芸大附にも勝利。宇都宮市内の永遠のライバル2校を撃破して決勝へ進出。決勝では白鷗大足利に惜敗したが、堂々の準優勝で関東大会へ出場した。第2シードで臨んだ昨夏は、実に101年ぶりの夏甲子園出場への期待が膨らんだが準々決勝で石橋と対峙。息詰まる継投の投手戦の末に1対2で惜敗し、悲願には届かなかった。勢いに乗った石橋はそのまま栃木大会を制した。その意味では、宇都宮商にもチャンスが十分にあったと言えた。昨季は課題と収穫が入り混ざったシーズンだった。
■最速145キロのプロ注目投手
躍進を支えたのは投手陣の底上げだ。昨夏は最速138キロの右腕エース山崎翔大(今春卒業)、制球派・佐藤歩(同)のほか、下級生だった藤本琉衣(3年)らの継投でゲームを作った。
春は山崎の先発完投で勝ち上がったが、夏の連戦に向けて佐藤、藤本、山崎へとつなぐ「勝利の方程式」を確立。投手育成に定評がある山口晃弘監督が、投手陣全体のレベルアップに成功。今季は、昨夏の経験を経て大きく進化した藤本が最速145キロをマークして注目を集めている。すでにNPB数球団のスカウトが視察に訪れるなど、プロ注目選手にリストアップされている。春・夏のピッチングしだいで本格的なドラフト戦線に乗ってくるかもしれない。春先の練習試合で県外強豪相手に好投しているという藤本は「チームを勝利に導くピッチングだけに集中している」と一球入魂で夏大会へ向かう。
■スローガンは「継心不乱」
今季のチームはエース藤本に加えて、実戦派右腕・佐藤琳月(3年=投手)らタイプの違うピッチャーが揃う。多彩な投手陣をリードするのは、強肩強打のキャッチャー岸田顕人(3年)。物怖じしないキャラクターでピッチャーを勇気付け、攻撃ではフルスイングの打棒で投手陣をバックアップする。岸田は「少ないチャンスで得点を奪って気合で勝ち切っていく」と盛り上げる。
今季のチームスローガンは「継心不乱」。一心不乱をヒントに、「一」を「継」に変えた造語。攻守に全員で「継」いでいく意味が込められている。末永大稀主将(3年=内野手)は「部員全員で想いも継いで甲子園を目指したい」と必勝を誓う。宇都宮商は今夏、102年ぶりに夏甲子園への扉を開ける。