2011年夏以来11年ぶりの甲子園へ
昨夏に前田監督勇退、金田新監督就任
長年に渡ってチームを率いた名将・前田三夫監督の勇退で新体制となった帝京。名門を引き継いだ金田優哉監督は、再び甲子園の地を踏むべくチーム作りに励んでいる。
■初陣・秋季大会では確かな手応え
復活の予感が漂っている。春夏通算26度の甲子園出場を誇る名門・帝京。昨夏の東東京大会で甲子園まであと一歩に迫ったが、惜しくも準決勝で敗退となった。昨夏のチームは、小島慎也(現3年=内野手)、高橋蒼人(現2年=投手)ら1・2年生が台頭し、新チームへの期待が高まっていたが、同大会終了後に、指導歴50年全国制覇3度の高校野球レジェンド指揮官・前田三夫監督の勇退が発表された。 チームを引き継いだのは参謀として支えていた金田優哉コーチ。名門帝京は新体制で、初陣となる秋季大会を迎えた。3回戦では都立強豪の小山台を撃破。準々決勝で国学院久我山と対戦した。帝京は初回に3点を奪ったが、2回に3失点すると、主導権を奪われて4対7で敗れた。金田体制での最初の冬を越えたチームは、春のトーナメントを順調に駆け上がっている(4月13日現在)。その戦いぶりには、確固たる自信が漲り始めている。
■ただならぬ甲子園への思い
昨秋の前田前監督の勇退を受けてコーチから昇格した金田監督は、帝京OB。帝京2年時には、先輩たちと共に甲子園の土を踏んだ。3年時には主将を任されたが甲子園にはたどり着けなかった。大学卒業後に一度は会社に勤めながらも高校野球指導の道への憧れから2年で退社して高校野球の現場へ。前田前監督から声をかけてもらい、2011年春に母校にコーチとして戻った。帝京は2011年夏に12度目の甲子園へ出場。コーチとしては順調なスタートだったが、そこからチームは聖地に行くことができなかった。金田監督は「2011年夏から甲子園に行けていないことに対して、コーチだった僕自身も責任を感じている。だからこそ、甲子園に行かなければいけない」と語る。新指揮官は、前田前監督の伝統を継承し、新たなエッセンスを加えている。すべては帝京復活のためだ。
■名門の宿命
昨年の秋季都大会準々決勝で国学院久我山に敗れたあと、選手たちはベンチで涙を流していた。それは、本気で選抜を狙っていた証拠だった。名取寛英主将(3年)は「秋に監督が変わって、最初の大会で甲子園に行くつもりだったが、力が足りなかった。この夏、自分たちの代で強い帝京を取り戻す。そのためには、強い気持ちで立ち向かっていく必要がある」と拳を握る。「強い帝京を取り戻す」。それは名門がゆえの宿命だ。選手たちは、2011年夏以来11年ぶりの甲子園へ返り咲くため戦い抜く。帝京のプライドをまとった選手たちは東東京の頂点に立つことで、自分たちの強さを証明する。今年の夏は、特別な戦いだ。