昨夏の西東京大会で殊勲のベスト4進出
泥臭さと自主性のハイブリッド式でチーム強化
昨夏の西東京大会でベスト4へ進出した富士森。伝統校は、時代に合わせた仕組みを作りながら、さらなるチャレンジを続けていく。
■神宮球場準々決勝で歴史的勝利
昨夏の快進撃が今も脳裏に焼き付いている。ノーシードで西東京大会へ臨んだ富士森は、小牧颯太主将(3月卒業)、エース甲斐凪砂(同)らを軸に一戦一戦を勝ち抜いていった。4回戦で聖パウロ学園、5回戦で駒大高に勝利し準決勝へ進出すると、神宮球場で行われた準々決勝で日大鶴ヶ丘と対峙。富士森はエース甲斐が執念のピッチングをみせて4対4で延長戦へ。延長10回に1点を奪って、歴史的な勝利を収めた。準決勝では日大三に屈したものの、神宮球場に駆けつけた応援団から大きな拍手が送られた。
■令和という時代を生きる
富士森の選手たちを鍛え上げているのは、廣瀬勇司監督だ。もともとは都職員だったが、38歳で教員へ転籍。八王子桑志、八王子北を経て2016年から富士森の指揮を執る。コロナ禍で練習時間が限られる傾向がある中で、昨年の富士森は体力づくりを徹底した。毎日約6キロの校外走を実践、夏前には練習後に、長袖のグラウンドコートを着込んでインターバル走を行った。指揮官は「私立との体力差を埋めなければ同じ土俵に立てない。まずは暑い中でも戦える体力を養っていった」と振り返る。そして、新たな練習にも積極的にトライ。秋・春予選敗退のチームが昨夏に4強まで駆け上がった。廣瀬監督は「生徒たちは令和という時代を生きている。言われたことだけをやるのではなく、それぞれが情報を集めて、新しい自分を探してほしい」と自立を促す。コロナ禍を乗り越えた富士森は、泥臭さ、効率性、自主性を組み込むハイブリッドで新たなスタイルを確立した。
■野心をインストールしたチーム
2023年のチームも、前チームに劣らない可能性を秘めている。リードオフマン佐野元(2年=内野手)、中距離ヒッター千葉駿之介(2年=外野手)を軸にした打線は、つながりで勝負。投手陣は、内田巧(2年)、山田佳(1年)、阿部晴希(1年)らが球威を上げている。投打のバランスに加えて、野心をインストールしたチームは、昨年以上の結果を虎視眈々と狙っていく。昨秋予選はブロック決勝でまたもや日大三とぶつかり敗れたが、この冬にじっくりと力を蓄えた。塚田陽人主将(2年=内野手)は「都立で勝つ方法を先輩たちが見せてくれた。春ベスト16、そして夏はベスト4を超えて甲子園を目指す」と練習に打ち込む。八王子から甲子園へ。都立の挑戦は、日々の鍛錬の積み上げ。自身の可能性を追求した先に栄光が待つ。