2019年秋、4年ぶりに予選突破。
選手たちが一体となって作る「僕たちの野球部」
今秋、4年ぶりに県大会出場を果たした城郷。
小池健一監督は、選手のやる気を存分に引き出しながら、時代に即した野球部のカタチを追求している。
(取材・伊藤寿学)
■ 「野球をする時間が一番楽しい」
城郷は、野球が大好きな選手たちの集まりだ。
授業が終わると、部活動開始を待ちわびた選手たちが一斉にグラウンドに飛び出してくる。
宮森加那生主将(2年=内野手)は「みんなと一緒に野球をする時間が一番楽しい」と笑みをみせる。
選手たちは校庭に集まると、一心にグラウンド整備を行っていく。
いまでこそダイヤモンドには黒土が見えているが、2017年に小池健一監督が着任(当時は部長)したときは、内野の形が判別できないくらいの状況だったという。
小池監督らコーチ陣は、選手たちとともにグラウンド整備。
その結果、表面の砂の下から黒土が顔を出した。
自分たちの野球場。
グラウンド状態が良くなるにつれて、選手たちの表情が変わり、技術も向上していったという。
2018年秋から指揮を執る小池監督は、校章と学校名がデザインされたトレーニングシャツを作成し、城郷カラーを前面に打ち出した。
また応援歌も復活させた。
小池監督は「新しいことをやっているのではなく、学校にもともとあったモノを使わせてもらっているだけ。
それが愛校心や伝統継承につながっていくと考えている」と話す。
チーム改革は、学校の特長に寄り添うように進められている。
■ 5カ年計画でチーム強化
今秋は、4年ぶりに秋予選を突破し県大会に出場し初戦突破の進撃をみせた。
夏大会後に本格始動した新チームは、2年生12人、1年生16人。
個性あふれる選手たちが伸び伸びとプレーしている。
中学時代に実績を残した選手たちではないが、城郷のグラウンドでそれぞれが実力を伸ばしていく。
主将となった宮森主将は身長180センチ体重109キロの主砲。
キャプテンが持ち前の明るさでチームを牽引している。
投手陣は、制球力抜群の技巧派左腕・川端敬人(1年)、緩急を生かした投球をみせる右腕・入澤新乃介(2年)が軸。
打線は、1年生ながら夏大会にも出場した大型三塁手・安藤和人が迫力の打撃をみせれば、福井拓海(2年=外野手)、山川空知(2年=内野手)もそれぞれの役割を果たす。
学年の枠を超えたチームワークが武器のチームは、秋予選初戦で慶応義塾に敗れて後がなくなったが、その後の2戦で連勝し2位で予選突破。
県大会初戦では泰野を4対3で撃破し2回戦へ進出、湘南学院に0対9で敗れた。
選手たちは秋大会の課題を胸にレベルアップを図っている。
目指すは、私学強豪の壁突破だ。
選手たちは、秋大会後に自主的に朝練習を始めるなど、意欲的に練習に取り組んでいる。
コーチ陣は、練習試合ごとに選手たちにテーマを与えて、自発的な成長を促している。
指揮官が大切にしている言葉は「No Limit」。
監督のスパイクには、その文字が刻まれている。
限界を決めずにチャレンジしていく力を養ってほしい。
そんな意味が込められている。
チームは「5年でシード校レベルに到達する」という5カ年計画を描いて、チーム全体の底上げを試みる。
小池監督着任3年目、チームは「ホップ、ステップ、ジャンプ」で飛躍のときを迎えている。
全国的に野球を取り巻く環境が変わっている中で、城郷は伝統を守りながらも時代に適したスタイルを目指す。
生き生きとした表情で白球を追う選手たちの眼差しには、大きな可能性が秘められている。
神奈川県立城郷高等学校
【学校紹介】
住 所:神奈川県横浜市神奈川区三枚町364-1
創 立:1987年
甲子園:なし
昭和62年開校の県立高。
学園祭や体育祭の活気が有名。
最寄り駅は市営地下鉄・片倉町。
OBに吉田幸央(元ヤクルト)。