今年6月に新グラウンド完成。
いまこそすべてを出し切るとき
向上の選手たちはこの冬、心技体で大きな成長を遂げていた。
甲子園大会が中止となった今こそ、チームスローガンである「ALL OUT」を実行する覚悟だ。
2020年8月号掲載
(取材・伊藤寿学)
■ 神奈川県下最大級の部員数
2019~2020年は「改革」の年だった。
野球部は、神奈川県下最大級の部員数を誇るが、限られた校庭スペースで練習を積んできた。
その環境で工夫をすることで野球部は強くなっていったが、その一方で学校は2016年から新グラウンドの準備を進めてきた。
グラウンド完成が近づいてきた矢先に、新型コロナウイルス感染拡大によって休校となった。
いまの3年生たちは、横浜スタジアム人工芝をイメージして造られたという新グラウンドで練習を積み、悲願の甲子園を目指すはずだったが、5月20日に甲子園大会の中止が決まった。
■ 冬トレで平均体重8キロアップ
チームは昨秋に、悔しい敗戦を経験した。
ベスト8入りをかけた4回戦で立花学園に1対4で敗れた。
松村青(3年=投手兼外野手)のソロアーチで先制したが、最後は粘り負け。
福島瞬歩主将(3年=捕手)は「接戦に競り勝つのが向上の野球。
同じ力の相手に負けたことが悔しい。甘さが結果につながってしまいました」と悔やむ。
春・夏に勝つには、パワーアップが必要。
オフシーズは、トレーニングリーダーとなったエーアンリン(3年=投手)の提案で、ウエイトアップに本気で取り組んだ。
エーアンリンを中心に意識改革に乗り出し、体重が平均8キロアップ。
1日米9合を食べたというエーアンリンは12キロも体重が増えたという。
投手陣は、ボールの威力が増し、打撃陣の飛距離は数段上がった。
さらに走塁にも力を注ぎ、チームには確かな手応えは生まれていた。
だが、練習試合もできないまま、コロナ禍に巻き込まれていく。
■ 小さなグラウンドで学んだこと
向上はこれまで校庭人工芝の“ダイヤモンド”ほどのスペースで練習を積んできた。
コロナ休校が明けて練習再開となった6月下旬、待望の専用グラウンドが完成した。
スコアボードには、チームスローガンである「ALL OUT」(すべての力を出し切ろう)の文字が書かれている。
3年生たちは、残された高校野球生活の貴重な時間を、新グラウンドで過ごすことになる。
三崎剛(3年=内野手)は「これまで小さなグラウンドでしたが、効率良く練習したことで僕らは成長できた。
狭いグラウンドで学んだことを生かして、チーム全員で戦っていく」と話す。
甲子園切符をつかむための神奈川大会は中止となったが、神奈川の覇者を決める独自大会は開催される。
向上は、部員全員の力を集結して、新たなグラウンドから神奈川のテッペン(頂点)へ駆け上がる。
向上高等学校
【学校紹介】
住 所:神奈川県伊勢原市見附島411
創 立:1907年
甲子園:なし
創立100年以上の歴史を持つ私立共学校。校訓は「明・浄・直」。の3つの「誠の心」を教育の基本とする。スポーツにも力を入れ、卒業生には多くのJリーガーがいる。2020年6月に新グラウンド完成。