選抜出場校同士の頂上決戦制す。縦縞復活、“12年ぶり”の夏制覇
桐生第一が県高校野球大会決勝で健大高崎を下して、“12年ぶり”の夏制覇を果たした。
選抜出場校(大会中止)同士の頂上決戦は、まさに激闘だった。
2020年9月号掲載
■ 星野、満塁弾含む6打点
2対2のスコアで迎えた6回、2死満塁。
打席には、星野綜汰(3年)が立っていた。
入学当初は目立った選手ではなかったが、コツコツと努力したことによって正捕手の座を射止めた。
身長161センチ体重74キロの骨太バッターは、初球、真ん中低めのスライダーをコンパクトに振り抜いた。
快音を残して大空に飛んだボールは、左翼線スタンド中段席に飛び込んだ。
値千金の満塁ホームラン。
自身初の公式戦本塁打だった。
一塁付近で打球を確認すると、大きくガッツポーズ。
健大高崎のプロ注目エース下慎之介から放った価値ある一撃だった。
跳ねるようにホームを踏んだ星野は、ベンチの仲間たちに笑顔で迎えられた。
■ 決勝戦にふさわしい激戦
桐生第一の先発は左腕の宮下宝(3年)。
4回2失点でゲームを作ると、2番手・下間博貴(3年)が3回被安打1に無失点で、健大高崎打線の勢いを止めた。
6対2とリードした中で、8回からは最速144キロ右腕・蓼原慎仁(3年)がマウンドに立った。
プラン通りの継投策だったが、健大高崎の泥臭い野球に苦しめられる。
8回に1点を返されると、9回には2本の内野安打で2点を奪われて、1点差に詰め寄られた。
だが、耐え抜いた。
最後の打者の打球は1・2塁間に飛んだが、一塁手・中島優月(3年)が好捕、カバーの蓼原へ送って、ゲームセット。
特別な夏の決勝戦にふさわしい激戦となったが、試合を通じてみせた桐生第一の鍛えられた守備が勝利をたぐり寄せた。
堅守・桐生第一の真骨頂とも言えるゲームだった。
■ 甲子園よりも大切なモノ
春の選抜切符を獲得しながらも、コロナ感染拡大によって大会が中止、この夏も甲子園大会は開催されなかった。
交流試合では甲子園(対明石商)に立ったが、聖地での真剣勝負のトーナメント戦で力試しができない無念さも残る。
しかしながら、選手たちは、3月からの半年で、多くを経験し、心身ともに成長を遂げた。
甲子園大会はなくなったが、選手たちは、甲子園よりも大切なモノを手にした。
桐生第一が、秋・夏を制したことは群馬高校野球の歴史にしっかりと刻まれる。