2017年夏、2019年秋ベスト8
野球日誌に描く「夢」と「希望」
東東京で確固たる地位を築こうとしている共栄学園。2017年夏、2019年秋にベスト8へ進出したが、もうベスト8では満足できない。チームはその先へ進むための準備を進めている。
(2021年4月号掲載)
■秋季大会の敗戦を受け止めて
2019年秋は、エース清水一眞(今春卒業)を擁して秋季都大会ベスト8へ進出。大きな可能性を秘めたチームだったが、コロナ禍によって春季大会が中止となり、夏の甲子園大会もなくなった。前3年生のチームは夏独自大会へ挑んだが、3回戦で敗れて激動のシーズンを終えた。
今季のチームは、先輩たちの思いを継承して始動したが、練習、実戦不足は否めず昨秋の秋季大会では1回戦で専大附にタイブレークで勝利したが、2回戦では創価に0対7で屈した。秋の背番号1・遠藤陽人(新3年)は「立ち上がりは抑えられたが、中盤以降に甘いボールを捕えられてしまった」と振り返る。チームは秋の敗戦を受け止めて冬トレへ向かった。
■外部指導によってスケールアップ
就任10年目を迎える原田健輔監督は、コロナ禍によって活動が限られる状況でいくつかの新たな試みを行った。秋季大会後、指揮官は外部トレーナーなど何人かのスペシャリストをチームに招いて、体の使い方、体の仕組み、トレーニング方法について選手たちと共に学んでいった。原田監督は「私自身も指導の引き出しを増やすために学ばなければいけないと思いましたし、選手たちが自宅などでトレーニングできるようにサポートしたかった」と意図を話す。
奇しくも1月には再び緊急事態宣言が発出された。選手たちは自主トレを余儀なくされたが、自分たちで考えて行動できるようになっていた。本格派右腕・東野雄志(新3年)は「体の使い方、トレーニング方法がわかったことでストレートの伸びが変わってきた」と手応えを話す。東野は春大会で球速140キロ以上をマークすることは確実だ。選手たちの意識が変わったことでチームは投打にスケールアップした。
■プライドを持つことの大切さ
チームは昨年11月から「野球日誌」を始めた。これまで選手の負担を考えて採用していなかったが、選手の内面を伸ばすために思い切って取り入れたという。選手たちは1日1ページの日誌を書き、それをLINEでチーム共有した。選手たちだけではなく、原田監督自身も日誌をしたためて毎日アップしている。そこに指揮官の覚悟が垣間見えた。原田監督は今冬、「KYOEIプライド」というタイトルの日誌をLINEで送った。どんな思いで記したのかを聞いた。「技術を磨くことももちろん大事なのですが、自分たちのチームを愛し、チームにプライドを持つことも大切。それには自分たちが誇りを持ってプレーしなければいけない。それがベスト8の壁を破るために必要な要素の一つなのかもしれない」(原田監督)。
プライドは、他人から教えてもらうものではなく、内面から湧き上がるもの。選手たちがプライドをまとったとき、真の強さが生まれる。