「秋・春連覇」県1位で東海大会出場へ
エース小林輝負傷降板を乗り越えて
秋王者・藤枝明誠が春季高校野球静岡県大会決勝で掛川西を3対2で下して初優勝を果たした。秋春連覇となったチームは、2017年夏以来2度目の甲子園を目指して、夏へ向かっていく。(取材・栗山司)
■決勝は競り勝つ
昨秋県王者の強さは揺るがなかった。
決勝戦は掛川西と対戦。初回にミスが絡んで1点を失う嫌な流れのスタートとなったが、ズルズルと崩れないのが藤枝明誠の持ち味。「ミスした後にしっかり立て直すことができた」という川瀬譲二主将(3年=内野手)の言葉通り、その裏、2死一二塁から5番・西岡泰眞(3年=外野手)がしぶとくライト前に持っていき同点。8回は相手投手の暴投で1点を勝ち越すと、6番・中野夢都(3年=内野手)の投手強襲となるタイムリーでリードを広げた。 投げては4回にエース・小林輝(3年)が左足を負傷するアクシデントがあったが、5回に緊急登板した山田蓮(2年)が「輝さんを勝たせたかった」と粘り強い投球を展開。9回は併殺で試合を締めくくり、右手を大きく上げて喜びを表現した。
■2番手投手が台頭
この春、藤枝明誠がテーマとして挙げたのは以下の2つ。①県ベスト4に入ること。②小林が投げなくても勝つこと。 昨秋は小林がほぼ一人で投げて県優勝まで登りつめた。ただ夏を見据えると、どうしても2番手投手の成長が必要だった。その期待に応えたのが2年生右腕の山田だ。 東海大会出場をかけた準決勝で公式戦初先発。ストレートの球速は最速134キロも、チェンジアップとカットボールを巧みに絡ませる投球で相手打者を翻弄した。8回を散発5安打で無失点。試合後、光岡孝監督は「十二分に合格」と目を細めた。 昨秋の東海大会後、小林に代わって強豪相手との練習試合でマウンドに立った山田。痛感したのはストレートの弱さだった。冬の期間はトレーニングで体を鍛えつつ、強いストレートをコーナーに投げることを繰り返した。光岡監督から「夏は準々決勝から3試合のどこかで2枚目のピッチャーが試合を作らないといけないんだ」と鼓舞され、「自分がやってやるという気持ちがあった」(山田)と自らを奮い立たせた。
■収穫のあった春
春の大会を振り返り、光岡監督は「大きな収穫があった」と口にする。山田の台頭はもちろん、野手陣も昨秋は控え捕手だった中野が三塁のレギュラーに定着し、県大会5試合で8打点をマークするなど、チームの底上げに成功した。川瀬主将も「秋よりも全員が少しずつ上に上がってきている感じがあります」と話す。そして、こう続ける。「先輩たちは僕たちより力がありましたが、コロナの影響で春から夏にかけて野球が思うようにできませんでした。自分たちはその思いを大事にして成長していきたいと思います」。 昨秋は県1位で東海大会出場も初戦敗退。春の東海大会に向け「1つ勝つことで、結果として秋よりも自分たちは成長したと思えるような大会にしていきたい」と光岡監督。秋春の2冠を達成した藤枝明誠が2017年以来の甲子園出場を見据え、さらに加速する。