投打の戦力充実、優勝候補
2004年以来の甲子園へ
投打において県トップクラスの能力を備える東海大静岡翔洋。「思いをつなぐ野球」をスローガンに掲げるチームは、2004年夏以来2度目の甲子園を狙う。(取材・栗山司)
■巨人ドラ1選手が率いる
「あとは実戦でいかに力を発揮できるか。今年はそこだけなんですよ」。日焼けした真っ黒な顔に自信が漲っている。 そう話す原俊介監督は東海大相模からドラフト1位で巨人に入団。プロ通算68試合に出場した。2016年に東海大静岡翔洋の監督に就任すると、2017年春に県優勝、2018年春には東海大会でベスト4入り。着々とチームを甲子園に近づけている。就任後、スローガンに掲げたのは「思いをつなぐ野球」。石上賢真主将(3年=捕手)の言葉だ。「例えば打撃だったら、つないでくれた打者の思いを力に変えて打つ。代々の先輩から受け継がれてきています」。 練習でも試合でも誰もが気迫を前面に出して全力プレー。それが翔洋のスタイルだ。
■県トップクラスの実力
今チームは最速144キロ右腕・鈴木豪太(3年)に加え、若月元夢(3年)と中積健之介(3年)の180センチを超える大型投手を擁する。一方の攻撃陣はパンチ力のある石上、安打を量産する落合昴天(3年=内野手)を中心に粒揃い。県トップクラスの能力を備えている。 実際、昨秋の大会前の練習試合は負けなし。優勝候補ナンバーワンの呼び声が高かった。しかし、中部大会は駿河総合に敗れる(1対4)。「初めて味わうビハインドの展開に力が発揮できず、子どもたちの心が揺れてしまった」と原監督は振り返る。 例年、冬の期間は技術練習とトレーニングを半分の割合で行ってきた。だが、今年に限ってはあえてトレーニングの量を増やしたという。全ては夏に力を発揮するためだ。「これまでの経験から春は成績を残せるが、夏に失速してしまう。何かを変える必要があると思った」(原監督)。 実際、冬の期間に体の土台が出来上がったことで、春からの成長比率がこれまでと違うと、原監督は手応えを得ている。
■冬から春の成長
チームをまとめる石上も、冬のトレーニングの成果を実感している。「走り込んだことで下半身が強くなりました。ただ走るだけでなく、走るフォームの形を意識しました。精神面も強くなったと思います」。 また、攻撃面の課題として、残塁が多く、大事な場面であと一本が出ないことが挙げられた。「ワンチャンスを逃さず、取れる点は取っていきたい」と石上主将。「この1年間、甲子園に行くためにはどういう練習をしたらいいのか、常日頃から考えてきました」。
春の県大会は加藤学園に敗れたものの、9回に1年生・米倉輝(捕手)の3ラン本塁打で1点差まで迫る粘りを見せた。その後、新型コロナウイルスの警戒レベルが上がり、5月中旬から練習試合ができなくなったが、チーム全体でバットを振り込んだ。1週間で約5000スイング。心身ともに充実した状態で夏の大会に突入した。 思いをつなぐ夏へ。2004年以来となる聖地に向けて殻を破る。
(2021年8月号掲載)