

佐野日大・麦倉監督
指揮官Interview
佐野日大〈栃木〉
麦倉洋一監督【元阪神】
就任10年目の春に選抜出場決定
「選手の力を引き出すのが私の仕事です」
佐野日大が第98回選抜高校野球大会への出場を決めた。OB指揮官・麦倉洋一監督にとって2017年春の就任以来、10年目で自身初の甲子園切符をつかんだ。元阪神の指揮官にとっては“甲子園凱旋”となる。
―1989年はエースとして甲子園
麦倉監督は佐野日大のレジェンドだ。少年時代から剛腕ピッチャーとして広く知られて佐野日大へ入学すると、1989年の高校3年時には全試合無失点ピッチングで初の甲子園出場へ導いた。平成元年の甲子園となった開幕戦・近大福山戦では、打者として平成初本塁打、投手として平成初完封をマークして1対0で勝利、歴史的白星を挙げている。
麦倉監督は2017年就任当時の取材で「高校3年生のときに甲子園へ行くことができましたが、すべてが必死でした。秋、春ともに準優勝で宇都宮工に負けていた中での夏大会で、決勝戦は足利学園(白鷗大足利)でした。大会は無失点で優勝することができたのですが、とにかく無我夢中で投げていました。高校時代の甲子園は本当に良い球場でした。球児のだれもが目標にする理由が分かる気がします。選手に不思議な力を与えてくれる場所だと感じました。自分がホームランを打ってしまうような場所ですから。いまの後輩たちに甲子園を味わってほしくて、母校の監督を引き受けたというのが本音です」と振り返っている。
―プロ5年目で無念の現役引退
聖地での話題をさらった剛腕は1989年秋のドラフト会議で阪神から3位指名を受けて入団した。プロ2年目の1991年に、プロ初勝利を含む2勝を挙げて将来のエース候補として高い期待を集めた。だが、翌1992年に右肩の痛みを訴えて戦線離脱。2度の手術を行ったが回復せずに1994年に現役引退を決断した。
「甲子園が終わった秋に、阪神からドラフト3位指名されて入団しました。プロ2年目の、甲子園のナイター・巨人戦に敗戦処理で初登板したのですが、本当に感激しました。その年にプロ2勝を挙げることができましたが、プロ3年目に右肩を故障してしまいました。復帰が近づいたときに今後は右ひじのじん帯が切れてしまって、プロ5年目でプロ人生が終わってしまいました。悔しさはもちろんありましたけど、自分の中ではやるべきことはやったと思っています。プロのマウンドに立つことができましたし、2勝を挙げることができました。この2勝が自分の中での勲章です。今の選手たちには、野球ができる、この瞬間を大切にしてほしいと思っています」
―佐野市、栃木県の代表として甲子園へ
2016年度での松本弘司前監督の勇退を受けて、母校から声が掛かった。現役引退後はスポーツ関連企業に勤めていたが、新たなチャレンジに乗り出すことを迷いなく決断した。チームは2014年春以来甲子園にたどり着いていない状況。甲子園出場に向けて選手と共に戦ったが、ライバルひしめく栃木県内の壁に跳ね返された。2018年秋の関東大会では準々決勝で桐蔭学園に敗れ、2021年夏は決勝で作新学院に惜敗するなど、あと1勝が届かなかった。
指揮官は「教えることは『我慢』だと考えています。教えすぎてしまえば、選手たちが考えることをやめてしまう。選手たちが悩んでいる姿をみても感情的にならず、まずはじっと我慢して見守るようにしている。そして選手たちがヒントを求めてきたら、いろいろな方法を一緒に考えていく。選手たちが一つの壁を乗り越えたのをみると、指導者としてやりがいを感じます」と選手に寄り添った。
昨秋関東大会は2024年に続き2年連続の出場。最初の関門となった1回戦・中央学院戦の激闘を8対7で制すと、準々決勝では駿台甲府に完勝して関東ベスト4で選抜有力となっていた。
「長きにわたってチームを支えてくれた学校関係者、OBの皆様の思いの結集が、選抜出場につながったと思います。伸びしろのあるチームなので守備をベースに、少ないチャンスで得点を奪っていくという佐野日大の野球を徹底していきたいと思います。佐野市、栃木県の代表として、甲子園の地で思い切り暴れてきたいと思います。高校、プロ以来の甲子園になりますが、プレーするのは選手たち。選手たちが思い切りプレーできる環境を整えていきたいと考えています」。
佐野日大のレジェンドは、母校のユニホームを着て1989年以来37年ぶりに聖地へ凱旋する。
PROFILE
麦倉 洋一(むぎくら よういち)
1971年栃木県生まれ。佐野日大卒。佐野日大3年の1989年夏(平成元年)にエースとして甲子園初出場。同年秋に阪神からドラフト3位指名されて入団。2年目の1991年にプロ初勝利を挙げたが、1992年に肩の怪我で手術し1994年に現役引退。一般企業勤務後、2017年春に母校・佐野日大監督就任。2026年春選抜出場決定。





