2018年秋予選で鎌倉学園を撃破。
2019年夏、慶応を土俵際まで追い詰める
藤沢西の選手たちが、めきめきと成長を遂げている。
2018年秋は予選で鎌倉学園を撃破、2019年夏は慶応相手に1対2の接戦を演じた。
「私学キラー」の異名を取るチームは選手たちの力を最大限に伸ばしながら進化の道を歩んでいる。
■ 夏は3回戦で慶応と対戦
強豪ひしめく湘南地区で近年、結果を残しながら格上チームをも苦しめているダークホース藤沢西。
2018年秋は予選で鎌倉学園に12対5でコールド勝ちを収めて県大会進出を決めると、春大会も県大会へ。
前チームの集大成となった2019年夏は1回戦でアレセイア、2回戦で大井・吉田島連合を下すと、3回戦・慶応戦まで駒を進めた。
周囲の予想は、慶応の圧倒的優位。
しかし、チームには揺るぎない自信が芽生えていた。
■ 私学をいかに倒すか
前任の大河原聖巳部長からチームを引き継ぎ2018年春から指揮を執る三宅裕太監督は、格上の私学をいかに倒すかを考えてきた。
公立校にはどこと対戦しても互角以上に戦えるだけの力はついた。
次なるステージに上がるには、シードクラスの私学強豪を倒していかなければならない。
藤沢西の選手たちは、中学時代に実績のない選手がほとんど。
私学強豪の選手と身体能力で勝負したらかなわない。
ならば、守備シフトを狭めていこう。
チームとして取り組んだのは「“60度”の守備シフト」だ。
■ 分析と観察力で守備シフト
野球は90度のグラウンドで戦うが、藤沢西はデータ分析と観察力を武器に“60度”の守備シフトを編成。
打球が飛ぶ方向を予測、誘導して守備の網にかけていく。
当初は、指揮官の指示によって動いていたというが、年間を通じて練習試合などでトライしていった結果、選手たち自らで動けるようになってきたという。
守備シフトのキーマンの一人・山崎颯(2年=内野手)は「打者のスイングとバッテリーの配給をみて、外野に指示を出している。
シフトを敷くことで野球のおもしろさがより分かってきた」と話す。
■ 慶応戦惜敗も大きな手応え
慶応戦は、守備シフトが的中した。
エース渡邉敬太(3年)の力強い投球に連動して、
守備シフトを実践、慶応の安打性の当たりが内野手・外野手の正面をつくなどピンチを回避。
慶応相手に互角の戦いを演じると、5回まで1対1の緊迫した投手戦となった。
6回に2点目を奪われて1対2とされたが、1点差で終盤へ。
金星を上げるチャンスもあったが、あと一歩及ばなかった。
しかしながら、神奈川の夏の大きなインパクトを刻んだ。
■ テーマは「全員戦力」
藤沢西のテーマは「全員戦力」。
中学時代に実績を残した選手は少なく、補欠の選手も多いが、藤沢西入学後に才能を開花させる選手が増えているという。
三宅監督は「実績がない分、ポテンシャルは大きい。
選手の特長を指導陣で見極めた上で、選手に合わせたトレーニングをしていく。
型にハメることはなく、基本を教えた上で、選手自らが考えながら練習をしているのが成長の理由」と語る。
選手自立のサイクルが確立されたことで、次々と好選手が排出されていく。
■ 『1』にこだわるチーム
2019年秋の新チームは、西原翔大主将、(2年=内野手)、須田隼モチベーションリーダー(2年=外野手)のふたりを軸にスタートを切った。
チームは、夏の主力だった山崎、金子大樹(2年=外野手)らが残り、新たな歴史を切り拓くべく、意欲的に練習に励む。
秋地区予選は、茅ケ崎北陵、鶴嶺の公立強豪の3チームブロックとなったが、6対1(茅ケ崎北陵)、8対1(鶴嶺)の完勝による2連勝で1位通過。
堂々の県大会出場を決めた。
部員は2年生11人、1年生6人と少人数だが、全員が試合経験を積める環境が、選手を成長させる。
チームは、1日、1プレー、1球、日本一の挨拶、日本一の道具整理など『1』にこだわりながら、全員で切磋琢磨している。
三宅監督は「日本で一番『1』にこだわるチームを目指して、全員で戦っていく。
『私学キラー』ではなくて、『私学を倒すチーム』になりたい」と指導に情熱を注ぐ。
藤沢西は、さらなる進化の瞬間を迎えている。
神奈川県立藤沢西高等学校
【学校紹介】
住 所:神奈川県藤沢市大庭3608-2
創 立:1974年
甲子園:なし
藤沢市郊外に位置する文武両道の公立進学校。
地域の発展とともに学校の人気も高まっている。
野球部は2008年の第90回大会・南神奈川でベスト4進出。
大河原聖巳部長、三宅裕太監督、中島俊幸コーチの指導体制。