経験を成長の糧とし、「打倒私学」でベスト8へ
今秋、県大会で2勝を挙げて存在感を見せた海老名。
そこで手にした収穫と課題を手に、洗練された野球で“旋風&上位進出”を目指す。
(取材・三和直樹)
■ 大きな経験を手にした秋
悔しさを抱えながらも、自信を持って新チームはスタートした。
今夏、初戦で桜丘に5対9で敗れてから、内野手4人と外野手1人のレギュラー5人が残留。
迎えた今秋、ブロック予選を2勝1敗で2位通過すると、県大会1回戦で金沢総合に7対3、そして2回戦では法政二に9対2の7回コールド勝ち。
3回以降毎回得点という試合運びで強豪私立を相手に完勝を収めた。
北岡克明監督は「チームの形としては最初からあった。
金沢総合戦では動かずに勝てた分、法政二高戦では“どんどん動いて行こう”と臨んで、5盗塁に加えてエンドランも決まった。
相手を混乱させることができた」と振り返る。
続く3回戦は“ビッグ4”の一角である慶応義塾と対戦して5対8。
ヒット数は相手の8本を上回る11本。
要所を抑えられる形での14残塁が悔やまれたが、「格の違う相手。
慶応は余力を持った状態で戦っていたけど、こっちは目一杯。
パワーとスピードの差を実感したと思う」と北岡監督。
それでも表情は明るい。
「それを経験できたのは良かった。
積極性を持って戦えたのは収穫だったし、春、夏に向けて目標が明確になった」と前を向く。
■ スマートに、効率的に
文武両道を掲げ、高い進学率を誇る海老名。
高野連の理事も務める北岡監督は、同校に赴任した8年前から『スマートベースボール』を掲げている。
「いかに頭を使って、効率よく、無駄のない野球ができるか」という中で「個々の能力を最大限に生かす」ことを目指す。
公立校が全国最激戦区の神奈川で戦う上では、欠くことのできない考え方だ。
そのチームコンセプトの下、新たに川﨑真一部長も加わり、「この2、3年ですね。
ようやくチームらしくなってきた。
川﨑先生が生徒たちのいい兄貴分になって、私が監督業に専念できています」と北岡監督は手応えを感じている。
普段、校内のグラウンドは「内野ノックもままならない」という広さだが、そこでバッティングに特化した練習に励む一方、月に4、5回は自転車で10分ほどの位置にある海老名球場を利用して実戦的な練習を徹底的に行う。
球場を借りられるのは午後5~7時までの2時間。
球場の外で準備を整え、中に入ったらすぐに練習に取り掛かる。
「すべてにおいて効率よく動く。
集中して、メリハリをつけて練習することが大事」と北岡監督。
そして、「試合の中では一瞬の判断が大事になる。
言われた通りにやっているだけでは成果は出せない。
自分から勝負を仕掛けられる人材になって欲しい」と生徒たちに熱く、語りかける。
■ 鍛え直して横浜スタジアムへ
洗練された野球を目指す中で常に追及しているのは、「球際の強さ」と「プレーの完成」である。
北岡監督は「上に行けば行くほど、スピードとパワーでは勝てなくなる。
そういう中で1本の打球処理をいかに勝負強くできるか。
それをどう積み重ねるか」と強調する。
冬のテーマは、「スクラップ・アンド・ビルド」と「ボトムアップ」。
2年生15人、1年生11人のチームを根本から鍛え直す。
強豪私立と常に互角の戦いを演じ、優勝候補のチームを相手にも接戦に持ち込むことができる「確かな力」を身につけるつもりだ。
そして目指すは、横浜スタジアム。
今野翔主将(2年)は「春にシード権を取って、夏にベスト8に入りたい、そのためには、技術的にも体力的にもまだまだ足りない。
この冬はフィジカル面を徹底的に強化したい」と拳を握る。
「上の代が1回戦で負けている。
まず、夏に校歌を必ず歌う。
いきなり甲子園と言っても現実的に考えて難しい。
目標はベスト8、我々の甲子園は横浜スタジアムだと言っています」とは北岡監督。
今秋の経験を手に、冬の間に力を伸ばす。
流した汗は、必ず“海老名旋風”を呼ぶはずだ。
神奈川県立海老名高等学校
【学校紹介】
住 所:神奈川県海老名市中新田1-26-1
創 立:1979年
甲子園:なし
男女共学の県立進学校。
教育方針は「学力の向上」、「体力の充実」、「個性の伸長」、「自律性の涵養」、「郷土愛の育成」。
通称「海老高」。
ソーラーパネルや風力発電、太陽光発電が設置され、「環境・エネルギー教育重点推進校」にも指定。
卒業生に吉岡聖恵(いきものがかり)がいる。