丘の上から響く球児たちの声。
打撃重視で目指す上位進出
2001年の共学化に伴い野球部が誕生した横浜学園。
若き指揮官が指導するチームは「凡事徹底」をスローガンに進化を誓う。
(取材・伊藤寿学)
■ 創立120周年間近の学園
創立120周年を間近に控える歴史ある伝統校だ。
「横浜女学校」という女子校として1899年(明治32年)に創立、100年間にわたり女子人材を輩出してきたが2001年に男女共学化。
共学化に伴い発足した野球部は、学校敷地内の中庭グラウンドで練習に励む。
部員数は2年生10人、1年生10人。
例年1学年平均10人弱の規模で、神奈川のトーナメントへ挑む。
ソフトボール部や陸上部も同じ校庭で練習しているため、野球部が使えるエリアはダイヤモンドほど。
限られた環境で、選手たちは努力を続けてきた。
守備練習には支障が多いため、時間を割くのは、主に“鳥かご”やティーネットを使った打撃練習。
年間を通じてスイングを続けていくことで、バッティング力は確実に上がっている。
■ チーム率いる若き指揮官
チームを率いるのは、昨秋から指揮を執る立場となり2年目の黒木琢真監督。
市立南の内野手として高校野球生活を送ったのち、大学卒業後、英語教師として横浜学園に着任、若い視点で野球部を指導している。
チームスローガンは「凡事徹底」。
当たり前のことを当たり前に。
あいさつ、礼儀などの生活面から球児としての自覚を求めている。
そして、準備、行動の効率化を促す。
黒木監督は「まだ手探りだが、生徒たちの意志を大切にしている。
選手たちとコミュニケーションを図りながら、選手たちがやりたいこと、選手たちの目指すことをサポートしたいと思っている」と話す。
■ 2017年夏には創部初の3回戦
チームは創部後、なかなか勝つことができていなかったが、一歩一歩成長を遂げると2012夏には1回戦で逗子開成を下す殊勲の勝利、2017年夏には創部初の3回戦へ進出してみせている。
校歌を響かせるべく臨んだ今夏は、長身左腕エース佐藤臣(3年)を擁して大会へ向かった。
横浜スタジアムでの初戦・大師戦、公立強豪相手に序盤は善戦しながらも最終的には1対13の5回コールド負けとなった。
指揮官は「神奈川で勝つのは甘くはない」と話しながらも、選手たちの戦いぶりに確かな手応えも感じている。
■ 野球ができる環境に感謝
夏以降にスタートを切った新チームは、夏の主力が多く残る期待の世代。
主将・菅原陸(2年=内野手)、副将・櫻井彬就(2年=投手)を軸に、長距離砲・山野井明優(2年=内野手)、リードオフマン志戸田榛希(2年=外野手)ら個性的な選手が揃っている。
深美大斗(捕手)、根本汐音(外野手)ら1年生の能力も高い。
秋大会は予選で敗退したが、悔しさを糧にチームは高みを目指す。
菅原主将は「学校最高の3回戦を越えて、さらに上へ行きたい。
野球ができる環境に感謝しながら、部員全員で前を向いて戦っていく」と力を込める。
横浜学園は、長い学園の歴史に、野球部の伝統をインストールすべく鍛錬を積む。
丘の上から響く球児たちの声が、チーム躍進の原動力となる。
横浜学園高等学校
【学校紹介】
住 所:神奈川県横浜市磯子区岡村2-4-1
創 立:1899年
甲子園:なし
横浜市磯子区の丘陵地に位置する私立高校。
創立から100年以上女子校だったが、創立100周年記念の翌2001年に男女共学化。
運動部はバスケット部、陸上部などが実績を残している。