
主体性を持った独自のトレーニングが鍵
本気で頂点を目指す挑戦
昨夏は16強入りした静岡市立。古豪のプライドを持ちつつも、謙虚な姿勢で自己研鑽を続ける。(取材・栗山司)
■強豪私学と渡り合う
静岡市立は伝統と挑戦の精神を胸に、高みを目指して歩みを進めている。昨夏はシード校を倒してベスト16入り。4回戦で静岡商に屈したものの、公立の雄としての実力を示した。2017年から指揮をとるのが安井信太郎監督。大学時代には全国優勝の経験を持ち、教員となってから複数の高校を強化してきた。就任後、体力や技術の強化に加え、メンタルトレーニングも導入し強豪私学と互角に渡り合っている。
■主体性を武器に
近年、次のステージへ進むために取り入れているのが選手の主体性を伸ばすこと。きっかけは新型コロナウイルスが蔓延した2020年まで遡る。練習の制限がある中でも、自分たちだけで「やれることをやろう」と取り組む姿があった。「社会に出たときに、言われたことだけをやっていても取り残されてしまう。高校野球を通じて主体性を伸ばしていくことが大切だと思った」(安井監督)。
その一環として冬休みの全体練習は一切なし。約2週間を自主トレーニングの期間にあて、練習内容を選手に任せている。ただし、漠然とこなすのではなく、個々で事前に練習計画を練って、メニューを決めていく。例えば主将の長島湊真(2年=内野手)は「打撃をアップしたい」と、細いバットでテニスボールを打ってミート力を高め、その後、実際に硬式ボールを打って感触を確かめる練習を繰り返した。課題は極限まで自分を追い込めるのかどうか。安井監督は「今もすごく一生懸命にやっている」と前置きした上で、「そこを乗り越えてきたら本物になる」と、さらなるブラッシュアップに意欲を見せる。
■目指すは全国制覇!
昨年の秋は県大会に出場するも初戦で敗退した。湖西相手に渡邉駿(2年)と西村文稀(2年)の投手陣が計3失点にしのいだが、打線は安打4本で2得点。長島は「バッティング面での弱さが出た試合だった」と振り返る。その後、振り込みの量を増やしてスイングスピードを上げると、11月の「大学野球オータムフレッシュリーグin静岡」では立教大相手に5得点を奪った。「冬の間の練習を見ていると、みんなしっかりと振る中でいい打球を飛ばしています」と長島。手ごたえを掴んで春に向かう。目標は春の県大会優勝、そして夏の全国制覇だ。安井監督は熱く語りかける。「周りから笑われてもいい。何を言われてもいい。ただ、一番を掴みにいこうよ」。頂点を見据え、逆算しながら全員が自分を磨き続けている。
チームのスローガンは「シン・フォアザチーム」。一人ひとりがチームのためを思い、全力でプレーする。全員で掲げるナンバーワンポーズを実現するその日まで、静岡市立の戦いは止まらない。
