“全国一”の練習で夏初優勝!
「頭とハートを使う野球」で頂点へ
聖隷クリストファーが準決勝・決勝のダブルヘッダーを制して夏の県大会初優勝を飾った。
上村敏正監督が就任して4年目、チームは困難を乗り越えて強くなった。
2020年9月号掲載
(取材・栗山司/撮影・山下大輔)
■昨秋の悔しさをバネに
名将・上村敏正監督が就任して4年目。
聖隷クリストファーが創部36年目で夏の県大会初優勝を飾った。
昨秋は県4位。準決勝では5点差をひっくり返されて逆転負け。
あと一歩のところで東海大会出場を逃した。
冬の期間は技術だけでなく、精神面も鍛え抜いたナイン。
甲子園中止が決定しても「県ナンバーワンになる」という目標がブレることはなかった。
「秋は本当に悔しくて。夏は県ナンバーワンになるんだと、必死に上村先生についていきました」(上島寛大/3年)。
「全国で一番練習をやってきた自信がありました」(山口颯太/3年)。
初戦で昨秋県優勝の藤枝明誠を下すと、浜松学院、浜松西、常葉菊川といずれも甲子園経験のある強豪に勝利。
準決勝では静岡商の最速148キロ左腕・ そして、決勝戦では初回に1点を失うも、2回に9番・中島虎太朗(3年)のタイムリーなどで一挙4点を奪って逆転。
投げては3回から登板したエース・城西裕太(3年)が粘りの投球を見せ、6対5で勝ち切った。
■「頭とハートを使う野球」を体現
浜松商、掛川西を春夏通算8度の甲子園に導いた上村監督。
聖隷クリストファーの監督に就任後、チームに植え付けたのは「頭とハートを使う野球」だった。
相手の心理を読み、ここ一番で力を発揮する集団へ。
上村監督は「まだまだだと思っていたけど、私の思っていたよりも生徒の方が成長した」と頬を緩める。
優勝投手となった城西は決して剛速球があるわけではない。
丁寧にコースに投げ分け、打たせて取る。
守備は堅く、例えミスで失点しても、追加点を与えない我慢強さがあった。
一方で攻撃面は全6試合のうち、4試合は相手よりも安打数が少なかった。
それでも大事な場面で四球を選び、足を絡ませながら得点につなげる。
今大会、1番打者として打率5割の活躍を見せた上島が話す。
「上村先生から学んだことは能力だけでは勝てないということです。能力が高い相手でも諦めずにやってきたことを信じれば勝てることを証明できたと思います」
試合中、ベンチから飛び交っていたのはこんな声だった。
「スキを見せるな」、「流れを渡すな」、「我慢しよう」。
逆境に立っても、決して怯まずに立ち向かう。
聖隷クリストファーの逞しい野球が県民に勇気と希望を与えた。