【日本学園 野球部】「超進化」 #日本学園

 

奇策ホームスチールで秋予選突破
一戦一戦進化し、強豪校次々撃破

 

■伝統ある学園で育む力

2016年夏ベスト16、2017年夏ベスト8、2019年秋ベスト16など、ダークホースぶりを発揮してきた伝統校だ。歴史ある学園は1885年(明治18)に神田で開校、現在の校舎がある世田谷区松原には1936年(昭和11)に移転してきた。学園内は、昭和初期の面影を色濃く残し、伝統の重みを感じさせる。国有形文化財に登録されている校舎を正面に中庭を抜けると、緑に囲まれた校庭が開ける。

日本学園の選手たちは、そのグラウンドで地道に練習を重ねている。

 

■経験値がゼロスタート

2020年夏の西東京大会はシード校としてトーナメントへ挑んだ。

コロナ休校明けで限られた準備しかできない状況下、3回戦で世田谷学園に敗れた。3年生たちは、2017年夏ベスト8進出を受けて、日本学園の門を叩いた「最強世代」。投打の戦力は揃っていたが、コロナ禍によって、力を発揮できないまま「夏」を終えた。2年生主体の新チームは、3年生たちの陰でくすぶっていた「谷間の世代」。試合に絡んでいた選手も少なく、経験値がゼロに近い状態でのスタートだったという。不安しかなかったチームが、次々と番狂わせを演じてみせた。

 

■ノーサイン本盗

秋季大会は1次予選初戦の調布南戦から、接戦の連続だった。

調布南戦は、結果こそ8対1の快勝だったが、中盤まではロースコアの展開から打線に火がついた。1次予選決勝は、実力選手を揃える日体大荏原。エース左腕・浅井颯斗(2年=投手)が丁寧なピッチングで相手打線をかわしていく。8回にスクイズで同点に追いつくと、9回2死3塁の場面で、相手左腕が振りかぶった瞬間を見逃さず、3塁走者・髙橋峻(2年=内野手)がホームスチールを敢行。

それが相手捕手の打撃妨害を誘って、決勝点を奪った。

相手投手の動作をみたベンチの吉澤伸容主将(2年=内野手)が指示を送り、髙橋がノーサインでスタートを切ったという。

 

■成長しつづけた大会

選手たちが自分たちで考えた「奇策」で予選を突破したチームは、本大会1回戦で立正大立正に2対0で勝利、2回戦では東亜学園を12対7で撃破してみせた。エース浅井の疲労が抜けなかった3回戦では日大二打線を止めることができずに0対16で敗れたが、新チームスタート時の状況を考えれば、合格点がつけられる結果だった。

高橋裕輔監督は「大会前は不安しかなかった中で、1試合ごとに選手たちがぐんぐんと成長していくという不思議な経験をさせてもらった。高校生は短い期間でこんなに成長するんだということを逆に教えてもらった」と語る。

日体大荏原戦では、選手たち自らの判断でノーサイン本盗を試みたが、そのチャレンジを後押しする高橋監督の日々の指導があったことは間違いない。日本学園の進撃は、決して偶然ではない。秋季大会の結果は、2019年秋に続く2年連続ベスト16。超絶進化を遂げる選手たちは、この冬、攻守の基本を徹底するとともにフィジカル強化に励む。

もうベスト16では満足できない。壁をぶち破る準備はできている。

[2021年1月号掲載]

 

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