【レジェンドインタビュー】元セ・リーグ首位打者&打点王 今岡真訪(元阪神―ロッテ) #今岡真訪

「人生にムダは一つもない。 いっぱい失敗して、 明日の力にしてほしい」

千葉ロッテマリーンズヘッドコーチ 元セ・リーグ首位打者&打点王
今岡真訪(元阪神―ロッテ)

 阪神、ロッテで通算15年間プレーした内野のマルチプレーヤー今岡真訪氏。阪神時代、首位打者、打点王のタイトルを獲得した実績を持つレジェンドが球児にメッセージを送る。

(2021年3月号掲載)

 

少年時代は毎日甲子園に行っていた

 

―名門PL学園の思い出は?  

「中学のとき宝塚シニアというチームでプレーしていましたが、チームで初めてPL学園から声をかけてもらったのです。家の近くには報徳学園もあったのですが、嬉しくて見学もせずにPL学園に入学してしまいました。初日から厳しくて大変でした(笑)。下見は大切です」

 

―PL学園を即決したのは?  

「憧れの名門ですし、実家から電車で30分ということもありすぐに決めました。家から自転車で行ける距離に甲子園があって、春・夏休みには毎日行っていたんです。そこで桑田真澄さん、清原和博さんを最前列で観戦しました。高校野球が大好きで、最盛期のPL学園は全試合観ました。あの感動は忘れられません。そのPL学園から声をかけてもらったので迷うことはありませんでした」

 

―甲子園マニアだったのですね。

朝の4時に甲子園へ行って、一番前に並んでいました。開門を待って、スタンドへ走っていましたね。だから超満員の甲子園でプレーすることは憧れでした」

 

―PL学園の寮生活は?

「実家では洗濯、掃除も何もしたことがないのに、いきなり上下関係の厳しい寮で鍛えられました。寮生活よりも練習の方が楽に感じました(笑)」

 

―寮生活で学んだことは?

「理不尽やムダなこともたくさんあったのですが、高校時代は多くを経験する時間です。効率良くやることも大切ですが、ムダを知ることも大切です。理不尽、ムダと思ったことさえも、大人になったら必ず生きてきます。これは間違いないと思います。振り返ると貴重な経験をさせてもらったと感謝しています」

 

―高校時代のポジションは?  

「ピッチャーで入学しました。PL学園の練習は、ピッチャーもシートノックに入るというのがあって、たまたまショートに入ったときに、中村順司監督から『そのままショートになれ』と言われました。そして1年生の秋からレギュラーに抜擢されました」

 

―そこからずっとショートだったのでしょうか?

「高校3年生の選抜で甲子園出場が決まったあと、その年からラッキーゾーンが撤廃されました。中村監督が『これからは肩の強いセカンドが必要になる』と、僕をセカンドにコンバートしました」

 

―コンバートを振り返ると?

「最初はショートにこだわりがありましたが、大学ではセカンドでオリンピックに出場できましたし、プロでも好成績を残せたのはセカンドのときでした。コンバートしてもらったことに感謝しています。適正ポジションは、いろんな角度から見極めていく必要があります。あの経験は、指導者になってから役立っています」

 

―甲子園での思い出は?

「高校3年生の選抜に出場しました。松井稼頭央くんが1学年下でエースでした。小学生のときPL学園伝統の“人文字”を観客席から見ていましたが、それを打席から見られることに感動しました。だから初球は打ちませんでしたね(笑)。チームはベスト8まで進出しましたが、個人の結果は9打数1安打でした(笑)」

 

100回失敗しても101回目で勝て

 

―高校卒業後は大学進学を選択しました。  

「最初は青山学院大のセレクションに参加しました。そのときに同じ年齢の井口資仁さん(現ロッテ監督)がショートに入っていて、そのうまさに圧倒されました。大学生相手でも抜群にうまかったです。そして僕はセレクション通過せずに東洋大へ進みました。いまロッテで監督とヘッドコーチになっていますが不思議な縁を感じています」

 

―高校球児に伝えたいことは?

「いまはいっぱい失敗していい。その失敗をすべて前向きに捉えて、明日の力に変えてほしいです。失敗しないようにプレーしても、うまくはなりません。失敗を恐れずにチャレンジすることが大切だと思います。注目されるとつい失敗しない方法を選んでしまいがちですが、選手の本当の価値は失敗したときに、どう振る舞うか。その選手が、醸し出す雰囲気が重要です」

 

―失敗を恐れないことが必要ですか?

「失敗を恐れないでほしいです。そもそもバッティングは10回のうち7回は失敗しています。3回打てれば好打者です。7回の失敗を悲観してはいけません。100回失敗しても、101回目にやってくれると思わせるように、向かっていってほしいです。失敗を恐れずにチャレンジしていく姿勢が、20歳、30歳、40歳になったときに生きてくると思います」

 

―球児へメッセージをお願いします。

「高校野球で選手に求められているのは数字がすべてではありません。チームに、その選手が必要であるかどうか。それは成績だけではありません。失敗しても頑張れるか、チームメイトの失敗をカバーできるか。数字以外に大切なものがあるということを忘れないでほしいです」

 

 

PROFILE
今岡真訪(いまおか・まこと)
1974年兵庫県出身。PL学園―東洋大―阪神―ロッテ。阪神、ロッテでプロ通算15年プレーした走攻守3拍子揃った内野手。2003年セ・リーグ首位打者、2005年は147打点をマークし打点王。現在はロッテヘッドコーチ。現役時代は今岡誠。

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