春一次予選中止を乗り越えて
10カ月の「空白」で最後の「夏」へ
1999、2001年夏に2度甲子園出場を果たした都立伝統校・城東。昨秋予選で敗退したチームは、春季予選がコロナ禍で中止になったことで「最後の夏」にすべてを懸ける。
■昨秋は一次予選で日野に敗戦
10カ月の「空白」になるとは誰も考えていなかった。1999、2001年夏に2度甲子園出場を果たした都立強豪。2019年秋都大会はベスト4、昨夏の東東京独自大会はベスト8に進出。甲子園を射程距離に入れながら、選手たちは鍛錬を積んでいた。昨夏を経験した左腕エース林平太郎(3年)、髙垣翼主将(3年=内野手)らが残った今チームは期待値が高まっていた。だが、秋季一次予選初戦で、西東京都立の横綱・日野と激突、0対1で惜敗する結果となった。
城東OBで2001年夏甲子園を経験した内田稔監督は「コロナ禍の夏で準備が十分にできないまま秋に入って、結果的に負けてしまった。すべてが難しかったです」と振り返る。チームは昨年9月20日に日野に敗れて、最も早く「秋」を終えた。
■コロナ禍に消えた「春予選」
秋に屈辱を味わったチームは、冬のトレーニングを前倒しして、春に向けての準備を進めていったが、1月の緊急事態宣言の発出を受けて都立高校の練習が休止。当初は、3月7日の宣言解除によって3月13日春季大会予選開始の予定だったが、宣言が2週間延長になったことで同予選が中止になった。そして秋都大会出場の64チームによって春季都大会のみが開催されることになった。内田監督は「再開へ向けて準備していた中で、生徒たちに掛ける言葉もありませんでした。個人的な意見を述べさせてもらえば、交流戦の1試合だけでもいいから公式戦の場を用意してあげたかった」と、選手の気持ちを汲んだ。「春」が消えたチームには、「夏」しか残されていなかった。
■「最後まで全員で戦い抜け」
選手たちは3月末に練習を再開した。
大所帯のチームは再開後からチームを2つに分けて、分散でトレーニングをスタートさせた。オフの自主トレ期間に力を蓄えた選手たちは、グラウンドで成長を示すべく白球を追った。髙垣主将は「春は、秋の雪辱の場だったので残念な気持ち。でもそこを引きずっても何も生まれません。逆に夏に集中できる状況になったので前向きに捉えていくだけ」と気持ちを切り替える。城東は選手主導で練習が進むが、指揮官が見守る中で選手たちは野球を楽しみ、野球に打ち込んでいる。内田監督は「多くの部員がいる中で、公式戦の場は夏しかなくなってしまった。3年生たちは、どんな状況になっても全員で最後まで戦い抜いてくれることを願っています」と思いを明かす。
今年のチームスローガンは「結」。選手たちは、結束して、結果を導くべく日々戦っていく。