秋季大会ベスト8
強力打線を武器に狙う頂点
宇都宮短大附は2020年秋季大会3回戦で文星芸大附を下してベスト8へ進出した。2017年夏の新球場完成後、チームはめきめきと地力を蓄えている。
■チームは著しい進化
もはやダークホースではない。
宇都宮短大附は東日本大震災時に「学校に元気と活力を」という生徒たちの強い思いから2011年春に創部。同年秋から増田清監督が指揮を執っている。チームは最初の3年間は、連戦連敗。公式戦初勝利は2014年秋。夏の初勝利は翌2015年夏だった。発足時のチームは、わずか20人程度。系列大学や銀行のグラウンドを借りて練習に励む日々。増田監督やコーチたちは手作りでバッティングケージを設置。選手たちは、限られた環境の中でトレーニングに励んだ。チームが頭角を現したのは、2016年秋。1年生の大型右腕・福田翔(現独協大2年)を軸にトーナメントを勝ち上がり、初のベスト8入り。2017年夏に、待望の人工芝球場が完成した。練習環境が整ったことで、2018年春には27人の新入生が加入、チームは著しい進化を遂げた。
■3年生が残した財産
前チームの3年生たちは、入学時から専用球場で練習できた初めての代。戦力も充実し、夏への期待が高かったが、コロナ禍によって春大会、そして甲子園へつながる夏大会が中止。実力を発揮できぬまま独自交流試合を経て、引退を迎えた。不遇の高校野球生活を送ることになったが、3年生たちはチームに大きな財産を残していったという。増田監督は「3年生たちは、切磋琢磨する中で、互いに厳しい声を掛け合うことができていた。それは、これまでに先輩たちから学んだ行動。私が厳しく言うのではなく、選手たち自らが気付いて発信してくれたことで、チームが引き締まった。それは大きな財産です」と目を細める。チームは技術だけではなく、精神的な成長も遂げている。
■福田主将を中心に一段上を目指す
今年のチームを力強く牽引するのは、2年前のエース福田翔の弟・福田航(2年=内野手)。圧倒的なキャプテンシーを備えた骨太の三塁手で、パワフルなスイングから強烈な打球を飛ばす。福田主将は、ときにチームに厳しい声を送りながら、士気を高めている。打撃力は部史上最強。福田主将が1番打者で打線に火をつける役割を担い、3番・竹谷侑磨(2年=内野手)、4番・伊藤晴稀(2年=捕手)、5番・鮎田拓実(2年=内野手)のクリーンアップ陣が打点を稼ぐ。投手陣は、最速134キロの1年生エース中村拓馬を中心に経験値を積み上げている。2020年秋季大会3回戦で、前年度準優勝校の文星芸大附に5対3で初勝利。続く準々決勝では作新学院に7対11で敗れたが、チームのポテンシャルは示した。福田主将は「どんな相手にも名前負けしないように、自信を持って戦える力をつけなければいけない。強い気持ちで戦い、あきらめないチームになりたい」と力を込める。2021年は、創部10年目のメモリアルイヤー。「ダークホース」から「強豪」へのターニングポイントだ。
[2021年1月号掲載]