秋の敗戦を力に変換する選手たち
競争激化、ゼロベースで挑む春・夏
名門・静岡は昨年秋季大会の優勝候補に挙げられながら準々決勝で敗れた。再起を誓うチームは、秋の悔しさを糧に春・夏を待つ。
(取材・栗山司)(2021年2月掲載)
■秋敗退からの復活
春夏通算42度の甲子園出場を誇る名門・静岡。昨秋は190センチの長身右腕・髙須大雅(2年=投手)を擁し、県の優勝候補筆頭と目されていた。当然ながら、チームも東海大会優勝を目標にしていた。
中部1位で臨んだ県大会。初戦は13対0(5回コールド)で勝利し、幸先のいいスタートを切った。しかし、準々決勝で苦戦する。三島南に3回に先制を許すと、打線は相手の変則右腕に苦しむ。6回に4番・池田惟音(2年=外野手)の本塁打で同点とするも、7回に2点を失い、1対3で敗れた。
チームを代表して捕手の川端慶(2年)が口を開く。「それまでの練習試合や公式戦で接戦が少なく、焦りが出てしまった部分がありました。試合の中でも修正ができず、それが敗因だったと思います」。栗林俊輔監督も「選手たちは一生懸命にやってくれたが、実戦経験の少なさが出てしまった」と分析する。
大会後、選抜出場が消えた静岡のナインは落ち込み、一時は目標を見失いかけたという。そんなとき、栗林監督は「下を向いていても何も始まらない。自分たちが今やるべきことを次の大会に向けてやるしかない」とナインに発破をかけた。川端は「その栗林先生の言葉で全員が少しずつ前に進む気持ちになった」と振り返る。
■強豪との練習試合で経験を積む
10月から11月にかけ、全国の強豪チームに胸を借りた。
中京大中京(愛知)、東海大相模(神奈川)、山梨学院(山梨)、愛工大名電(愛知)などと練習試合を組んだ。最初の中京大中京戦は力を発揮できずに2対5で敗戦した。「最初は相手が上だと、なかなか自分たちのプレーができませんでした。だけど相手の名前と戦うのではなく、やるべきことをすれば結果がついてくると分かった」と川端。徐々に本来のポテンシャルを発揮し、シーズン最後の練習試合となった11月29日の県岐阜商戦は4対2で勝利した。
この試合で堂々とした投球を見せた髙須も一皮むけた。「中京大中京戦の頃は相手に向かっていけませんでしたが、最後の試合ではストライク先行でどんどん勝負にいけて良かったです」。進化を続ける右腕にプロのスカウトの視線も注がれる。
■激しいレギュラー争い
秋の大会では実績のある2年生の多くがレギュラーを占めていたが、冬にかけて1年生も急激に成長。例年以上に各ポジションのレギュラー争いの激しさが増している。「1年生が伸びてきて、夏に向けてタフなチームになりそうだ」と栗林監督。川端は「この冬でレギュラーは白紙になって0からのスタートだと思っています」と気持ちを高ぶらせる。
秋の悔しさを胸に秘めたチームは心身ともに大きくなり、実りの春へ。絶対王者が戻ってくる――。