2019年夏の西東京ベスト8進出
昨秋、今春都大会出場で得た経験値
2019年夏の西東京大会でベスト8へ進出した豊多摩。2年前の歓喜を知る3年生は“あの場所”を目指して、野球を楽しむ。コロナ禍だからこそ今できることにトライしていく。
■学校全体の活力がチームの力に
学校は、コロナ禍でも活気にあふれていた。野球部のみならず様々な部活の選手たちが校庭やグラウンドを走り回り、活力を生み出している。豊多摩は1940年創立の伝統都立。文武両道、自主自律に加えて、自由な校風で制服がないのも特長の一つ。生徒主体の伸びやかな雰囲気が、野球部員を成長させる要因の一つになっている。都立の野球を知り尽くす智将・平岩了監督の指導のもと、豊多摩の選手たちは肩肘張ることなく野球に向き合っている。チームは2019年夏の西東京大会で進撃をみせてベスト8へ進出した。当時のチームは、まさに応援されるにふさわしい集団だった。今年の主力となる3年生は、2年前の進撃をスタンドで見守った代。選手たちは、先輩たちが見せてくれた景色を越えるべく、さらなる高みを目指す。
■選手の気持ちは一つ
今年のチームも、個性あふれる選手たちが集っている。攻撃型リードオフマンの役割を担うのは、184センチの大型プレーヤー外内滉大(3年=内野手)。右投右打の「未完の大器」でサードをはじめ多くのポジションをこなすほか、投手としてもマウンドに上がる。豊多摩は、1番・外内、飛距離に自信を持つ4番・藤岡利凪(3年=外野手)のふたりを攻撃の軸として戦っていく。投手陣は、黒澤健太主将(3年)と渡邉舜(3年)がゲームを作っていく。投手陣は、コロナ禍で学校練習ができない状況下、web会議システムZOOMを利用し、外部トレーナーの指導を受けてストレッチや自重トレーニングなどを実施し、春へ備えた。守備は、長岡慶次朗(3年=遊撃手)、深谷美千顕(3年=二塁手)の二遊間がアウトを確実に稼ぐ。春大会後、再びの緊急事態宣言によって練習ができなくなっているが、選手の気持ちは一つになっている。
■夏へとつながる「ドラマ」
昨秋は1次予選で四商、淑徳を下して本戦へ出場。1回戦で岩倉と好勝負を演じたが2対5で敗れた。今春は初戦で啓明学園と対戦し、シーソーゲームの末、延長10回タイブレークにより8対9で惜敗した。外内は「チームの主力のケガでベストメンバーではなかったが、私立相手にしっかりと戦うことができた。この経験を夏へ生かしたい」と話す。今年は、今年度で定年を迎える平岩監督の“区切り”のシーズン。まだ来年度以降は何も決まっていないが、選手たちには師への恩返しへの気持ちが強い。選手たちは、2019年夏のベスト8越え、そして頂点を目指す。黒澤主将は「平岩先生のためにも甲子園へ行く」と力を込める。豊多摩のドラマは、「最後の夏」へとつながっていく。