学業と野球の両輪でさらなる高みへ
進学校から本気で目指す甲子園
若きOB指揮官の下、強豪にも引けを取らない戦いで存在感を示す沼津東。夏大会に全てをかけるべく、チームの士気は高まっている。(取材・栗山司)
(2021年8月号掲載)
■ダークホースの快進撃
東部地区屈指の進学校である沼津東。2017年から指揮をとるのがOBの勝又健太監督だ。早稲田大では捕手兼学生コーチで活躍。沼津東に赴任後、熱い指導でチームを強化している。 2019年秋には強豪私学を次々と撃破した。東部大会では御殿場西、加藤学園を下し、県大会では磐田東にコールド勝ち。県ベスト8入りを果たした。さらに昨年の夏は4回戦で髙田琢登(現横浜DeNA)を擁する静岡商に3対4で敗れたものの、互角に渡り合った。
勝又監督は「本気で甲子園を目指している」と語る。「毎年、戦力が変わっていくが、その中でどうしたら甲子園に行けるかを常に考えて取り組んでいる」。
短時間の練習で工夫して活動するのが同校の特徴だ。週3日間は7時間授業。完全下校が19時30分と定められているため、日々の練習時間は2時間30分程度となる。また、冬場は週2日間のオフを入れている。平日は個々の力を伸ばすことをメインに、休日の練習試合で全体のプレーの精度を高めている。
■「文武同道」でレベルアップ
そんな短時間集中型のチームが大事にしているのは「考動 問い続ける」という言葉だ。昨年の新型コロナウイルスの休校期間中に決めたテーマで、グラウンドのバックネット裏には同様の言葉が掲げられている。大塚豪主将(3年=内野手)が意味を説明する。「例えば今、自分たちが正しいと思っている練習が、本当に正しいのか。内外野のフォーメーションを組んでいるが、それが実際に試合で生かせるのか。それを常に考え、問い続けることを大事にしています」。
また、進学校という強みを生かし、学業と野球の両輪でレベルアップを試みる。大塚主将が続ける。「よく監督さんに言われているのは、勉強で学んだことは野球に生きるし、野球で学んだことは勉強にも生きるということです。『文武両道』ではなく、『文武同道』という考え方です」。ビジネス用語でもある「マイルストーン」の考えを取り入れ、野球でも勉強でも、計画的に物事を進めている。「全てが繋がっている」と大塚主将は話す。
■甲子園の土を目指して
今年は前チームからメンバーが4人残り、秋の県大会に出場。しかし、春は東部大会で初戦敗退。初回に3点を奪ったものの、ミスが絡んで逆転負けを喫した。「悪いところが全部出てしまった」と大塚主将。5月中旬から新型コロナウイルスの警戒レベルが上がり、練習試合ができなくなったが、チーム内の紅白戦で夏の大会に向けて仕上げた。
旧制沼津中時代、戦後1回目の夏の選手権大会に出場している沼津東。だが、この年は甲子園ではなく、西宮球場で開催された。偉大な先輩が踏めなかった甲子園の土を踏むために――。沼津東ナインは考えて問い続ける。