学業に障らない効率的な練習を追求
真の文武両道の先にある3度目の甲子園へ
県内有数の進学校ながら、運動部、文化部ともに盛んな富士。今年度より指揮を執る稲木恵介監督は、文武両道を目指す彼らならではの取り組みを実践している。(取材・栗山司)
■伝統校に新監督が就任
今年創立100周年を迎える富士。1979年夏、1987年春の2度甲子園の土を踏んでいる。一方で毎年、約200名が難関の国公立大へ進学。文武両道を実践する伝統校だ。
今年4月より指揮をとる稲木恵介監督は、前任の三島南で選抜大会(21世紀枠)に導いた経験を持つ。新指揮官は「本当の意味で学業と部活動を両立させていきたい」と抱負を語る。
日々の練習時間は限られている。平日は16時45分にスタート。19時に終わり、19時30分には下校する。休日も試合以外の練習日は、半日のみ。「この学校の主軸は学業。それは揺るがないもの。だから、短時間でいかに効率的に練習ができるか。そこに挑戦していきたいと思っています」(稲木監督)。 時間を有効的に使うため、各時期に必要な練習を30分刻みでこなしていく。秋の大会はスローイングミスで初戦敗退。そのため取材日はボール回しを徹底的に行っていた。一般的な内野間のボール回しだけでなく、ゴロを拾って投げる動作を入れるなどバリエーションが豊富。ミスしても、『もう1回お願いします』はなし。できなかった選手は、空いている時間を見つけて自分で練習するスタイルだ。
■雨の日はルールの講習
今夏の県大会は初戦で私学の強豪・浜松学院を撃破。さらに、2回戦は清流館相手に7回コールド勝ち。3回戦では、その後、決勝に進出した静清に敗れたものの、堂々とした戦いを見せた。 前チームからレギュラーの中澤樹主将(2年=内野手)は「夏までは短期間でしたが、稲木先生からは戦術面を教わることが多かった」と話す。「一番印象に残っているのはプッシュバントです。知ってはいましたが、やったことはなかったのですごく新鮮でした」。
グラウンドでのプレーだけでなく、雨の日は座学。稲木監督を講師に、学校内でルールについて学ぶこともある。
■秋、冬で戦える力を養う
秋は前述のように初戦で敗退。守りのミスで失点を重ね、中澤は「反省しかない試合でした」と振り返る。 その後は来春の「シード権獲得」を目指し、トレーニングや基礎練習を優先する期間に入った。「自分たちは体が細いので、たくさん食べて、トレーニングしてまず体を作って。あとは力強いスローイングやバッティングができるスキルを磨きながら、チームの雰囲気をもっと明るくして、元気のあるチームにしていきたいです」(中澤)。 前チームからのエース・水越壱成(2年)を中心に失点を最小限に抑え、攻撃は足を絡ませながら得点を奪っていく。
3度目の甲子園に向け、チームは新たな一歩を踏み出した。