秋季県大会準優勝で関東大会進出
最後の夏に懸ける思い、悲願の甲子園へ
昨年の秋季県大会で準優勝し創部初の秋関東大会出場となった向上。関東大会では1回戦で浦和学院に惜敗して選抜への道は途絶えたが、選手たちは秋の経験を糧に悲願の夏甲子園を狙う。
■投打の軸がかみ合うチーム
秋の躍進は、偶然ではなく必然だ。あふれんばかりのキャプテンシーをみせる小野侑人主将(3年=外野手)を軸に、エース佐藤諒音(3年)、主砲廣田翔馬(3年=捕手)ら投打の核が揃ったチームは秋のトーナメントを駆け上がった。準々決勝・横浜隼人戦では投打がかみ合い8対0の7回コールド勝利。準決勝・桐光学園戦では、打線のキーマンである3番・田島淳平(3年=外野手)、4番・廣田らが快音を響かせて得点を奪っていく。ゲームは5回までに向上が5対2とリードすると、終盤に2点を失ったが5対4で競り勝ち、関東大会出場を決めた。決勝では東海大相模に敗れたが堂々の準優勝、選抜出場をかけて関東大会へ乗り込んでいった。1回戦の相手は浦和学院。先手を許した中で中盤までに5対6と食らいついていったが最後にパワーで押し切られて5対7で惜敗、今季のチームの“最初の挑戦”は終わった。主砲・廣田は秋季関東大会敗戦後、「このチームで絶対に甲子園へ行く」と誓った。
■関東大会で感じた課題
秋季関東大会で敗れた相手の浦和学院は今春の選抜でベスト4進出。全国レベルの相手との差は、何だったのか? 平田隆康監督は「全国屈指のチームとの真剣勝負で、パワー、スピード、高度な連係など、チームの課題が見えてきた」と語る。グラウンドに戻ったチームは、甲子園レベルのチームになるべく冬のトレーニング期に入った。エース佐藤は、この冬に体重が76キロから88キロまで増加。ストレートの威力が大幅に増している。田島、廣田を軸とした打撃陣もスイングスピードを上げて夏の舞台へ備えている。田島は「秋は、チームの長打力が足りなかった。春、夏はチャンスでの長打で得点を積み上げていきたい」と話す。冬はコロナ禍の影響で1月中旬から3月上旬まで練習が休止となったが、選手たちはオンラインでミーティングを繰り返し、デジタル野球ノートでそれぞれが日々の練習と成長を綴った。そして、球春を迎えた。
■部員全員で甲子園へ
今年の世代は、コロナ禍の2020年4月入学だが、その年の6月に新グラウンドが完成している。それまで内野ダイヤモンドのスペースで工夫しながら練習を積んできたチームだが、環境が大きく変わったことになる。小野主将は「グラウンドができることは知っていたが、グラウンドがあるから向上を選んだわけではない。狭いグラウンドで情熱を持って練習していた先輩たちの姿をみて、ここで野球がしたいと思った。先輩たちのためにも自分たちの代で甲子園へ行く」と力を込める。これまでは遠慮しがちだった「甲子園」という言葉が、普通に聞こえるようになった。それも進化の証だ。向上の選手たちの目標は、甲子園切符をつかみ取り、部員全員で甲子園へ乗り込むこと。秋の関東大会の悔しさを糧にスケールアップしたチームは、野心を秘めて、夏へ向かう。神奈川の優勝旗は、ただ一つ。選手たちは、新グラウンドに優勝旗を持ち帰るために、ありったけの情熱をぶつけていく。