【足利工】 「本気」

夏に6度の甲子園出場を果たした伝統校
「本気」のスイッチを入れるのは自分

 夏に6度の甲子園出場を果たした伝統校・足利工。夏大会まで残り4カ月、「夏の足工」は“本気の努力”で栄冠をつかみ取る。

■2022年秋は2回戦で敗退  

伝統校・足利工は1856年の甲子園初出場を皮切りに1987年までに計6度の甲子園出場を果たした。特筆すべきは、すべての甲子園出場が「夏」であるということ。選手たちは高校入学から2年半という時間を最大限に活用し、甲子園切符をつかみ取ってきた。2016年4月から足利工を率いる伊藤光一監督は入学してくる生徒たちに足利工の伝統を伝えて自覚を促してきた。チームは2019年秋、2020年秋にベスト8へ進出、復活の狼煙を上げた。しかし、コロナ禍の練習環境で過去2年は3回戦が最高戦績。新チームで迎えた昨秋は、2回戦で宇都宮南と対戦。リードする展開でゲームを進めたが延長戦で敗れた。渡邊零治(3年=外野手)は「勝てた試合だったので悔しさが残っている」と振り返る。

■高まるチームの緊張感  

チームのキーマンは、攻守にセンスあふれる渡邊、迫力のスイングをみせる松村成瑚(3年=外野手)の副将ふたり。さらに右サイドスローの実戦派エース栁田譲司(3年)が制球力を活かしたピッチングでゲームを作っていく。チームをまとめる栗原立樹主将(3年=内野手)は、中学生だった2019年秋の台風(令和元年東日本台風)時の河川氾濫で自宅が浸水。家族と一緒に自宅の2階からヘリコプターで引き上げられて救助された被災経験を持つ。栗原主将は「野球ができることは当たり前ではない。家族に支えてもらって、仲間と共に野球ができる時間を大切にしながら結果を追求したい」と練習に励む。チームはオフシーズンにフィジカル強化を図るとともに基礎を徹底。3月第1週から練習試合がスタート、チームの緊張感は一気に高まっている。

■本気で甲子園を目指す  

選手たちのソックスには6本のラインが入っている。これは6度の甲子園出場を表している。2023年の選手たちは、足利工のソックスに7本目のラインを刻むべく練習に打ち込む。150キロのボールを投げたりホームランを打ったりするには技術が必要だが、本気のスイッチを入れるか、入れないかは自分次第。自分自身のスイッチを操作できるのは、本人しかいない。伊藤監督は「選手たちはそれぞれが大きな可能性を持っている。だからこそ本気になってほしい。本気になることで見える世界がある」と選手たちのアクションを待つ。春大会を間近に控えるチームは、その先の夏大会に照準を合わせる。本気で甲子園を目指した先にだけ、聖地が見えてくる。

 

 

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