城東時代に甲子園に出場した指揮官
凡事徹底で目指す人としての成長

毎夏の東東京大会で進化した姿をみせる都立気鋭の広尾。2021年夏にベスト16となるなど地力を高めている。現役時代に甲子園を経験した指揮官が率いるチームは、頂点を目指して突き進む。

■都心のグラウンドにみなぎる野心

グラウンドには野心がみなぎっている。JR恵比寿駅から徒歩10分の位置にある広尾。都心のため校庭は決して広くなく、他部活との共用だが、環境を言い訳にすることなく練習に励む。現在文京指揮官の梨本浩司監督が率いた2000年代後半から2014年にかけては5回戦に何度も出場するなど実績を挙げた。野球部の躍進によって学校全体のムードも変わったという。選手の個性と規律を組み込んだチームは2021年夏にも5回戦へ勝ち進み、都立野球の魅力を広めた。今夏は3回戦で、好投手を擁する立教池袋と対戦して接戦に持ち込んだが3対5で惜敗した。終盤の追い上げで好機をつかんだものの追いつけずに2点差で敗れた。だが懸命のプレーには大きな拍手が送られた。

■聖地・甲子園の土を踏んだ指揮官

 野球熱が高まるチームを率いるのは、城東出身の安部雄太監督だ。高校時代には、有馬信夫監督(現・足立新田監督)、梨本監督の指導を受けて、2度の甲子園出場を経験。1年時にはアルプススタンドでの応援だったが、3年夏には投手としてメンバー入りし聖地の土を踏んでいる。当時のチームメイトには、城東・内田稔監督、小岩・茶川剛史監督、足立東・小松崎豊監督がいた。安部監督は「甲子園の大きさと雰囲気は今も忘れられない。自分たちは2回戦が初戦で計14日間も甲子園にいたのですが、1日1日が充実していて夢のような時間でした」と懐かしむ。中学時代から教員、指導者を目指して大学卒業後に教員となり、中学校勤務を経て2019年に広尾着任、2022年から指揮を任されている。「自分で考えて行動できる選手を育てたい。そして野球を好きになってほしいです」。

■本気で狙う甲子園出場

目標は、甲子園出場だ。藤井一希主将(2年=捕手)をはじめ選手たちは、自分たちで練習メニューを考案して放課後の練習に励む。オフシーズンは個人練習が主体で、各自が課題に取り組む。安部監督が投手出身のため、ブルペンでは多くのヒントを与えながら成長を促していく。指揮官は「型にはめず、個性を活かしてあげたい」と選手の成長を見守る。今年のチームは、身長186センチの大型右腕・古荘敦士(2年)が絶対軸。最速140キロの豪腕には、春以降プロスカウトの視線が集まる可能性も十分だ。打線は、唯一夏からレギュラー入りしている村松孝星(2年=内野手)をはじめ、大塚渚生(2年=外野手)、関秀丸(2年=内野手)、寺田壮志(2年=外野手)が勝負強さと執念を発揮して盛り上げていく。スローガンは「凡事徹底〜継続は力なり〜」。藤井主将は「当たり前のことを徹底的に追求して選手として成長していきたい。その先に勝利という結果があると思います」と力を込める。安部監督は「選手たちと一緒に甲子園を狙っています。都立でも勝てることを結果で示していきたい」と野心をのぞかせる。広尾は、渋谷区から本気で甲子園を狙う。

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