「自主」と「規律」の両立へ
春の悔しさを夏にぶつける
昨夏に好勝負を繰り広げた八王子実践。2019年よりチームを率いる河本ロバート監督の下、春の「1イニング14失点」を乗り越えて新たな挑戦に向かう。(取材・三和直樹)
■「7対8」から「7対22」
野球の“怖さ”を痛感した。今春、一次予選の代表決定戦で強豪・安田学園と対峙すると、序盤から投打ともに互角の戦いを演じて8回を終えて7対8の1点差。しかし、9回表に不運な判定があった中で一気に流れを失い、2死から一挙14失点。「大変でした。いろいろ考えさせられる試合でした」と河本ロバート監督。初回から力投を続けた佐藤大晟主将(3年=投手)は「チェンジだと思って気持ちが切れてしまって、立て直せなかった」と振り返った。 強打の捕手・矢口丈一郎(現亜細亜大)を擁した前年度のチームは、秋に堀越と5対6と接戦を演じると、最後の夏も3回戦で日大鶴ヶ丘を相手に3対6の好勝負を繰り広げた。その出場メンバーから新チームに残ったのは、当時は二塁手だった佐藤と外野の加藤匠悟(3年=外野手)の2人のみ。「戦力的には厳しい」(河本監督)というところからスタートし、チームとしてもまとまりを欠き、冬には主将が交代するという事態もあった。だが、“その時”を考えると、今春の戦いは大きく進歩。最後は力負けしたが、「あれだけチーム全員が勝ちたいという気持ちで立ち向かっていった試合はなかったと思う」と佐藤主将が言えば、河本監督も「勝利への執念を見せてくれた」と手応えも同時に口にした。
■「うまくバランスを取って」
八王子実践OBで大学卒業後に米マイナーでプレーし、WBCアメリカ代表のマイク・トラウトとも対戦経験がある河本監督は、選手の将来性に重きを置き、自主性、主体性を求めながら自由度の高いチーム作りを進めてきた。しかし、今年のチームを前に「その代の雰囲気、特色によって、指導法も変えないといけない。自主性と強制の共存は難しいですけど、うまくバランスを取っていきたい」と悩みながらもしっかりと前を向く。
高い能力を秘める下級生たちの成長も楽しみだが、まずは粘り強さを増したエースの佐藤、長打力自慢の4番・石原隆乃介(3年=捕手)、「1番・センター」で高い打撃技術を持つ前主将の加藤ら3年生たちの力を信じたい。迎える夏、「1イニング14失点」から大きく進化した姿を見せてもらいたい。