【指揮官インタビュー】健大高崎〈群馬〉青栁博文監督(2023年夏)

春季関東制覇、8年ぶりの夏甲子園へ
夏は特別な戦い。敵は己にあり

健大高崎(群馬)が春季関東大会で関東強豪を次々と撃破して5年ぶり3度目の優勝を果たした。2015年夏以来、8年ぶりの夏甲子園を狙う青栁博文監督に聞いた。

 

《関東強豪を撃破して初頂点》
健大高崎は今夏の群馬県大会決勝で明和県央に勝利して関東大会出場を果たした。関東大会では、エース小玉湧斗(3年)を欠く戦いとなったが1年生の石垣元気、佐藤龍月の好投によって関東強豪に競り勝っていった。準々決勝では帝京、準決勝では専大松戸、決勝戦では木更津総合に勝利して関東の頂点に立った。過去11年で3度の春関東制覇となっている。チームは今春の選抜大会に出場するなど2017年から4度の選抜出場を成し遂げている。しかしながら、夏の甲子園は2015年以来、遠ざかっている。前橋育英というライバルに行く手を阻まれているのだ。この夏はどう戦うのか。

 

―春季関東大会制覇の要因は?
「小玉がいない中で、新戦力の1年生ピッチャーがしっかりと投げてくれた。野手も、小技、走塁、長打などいろんなことができて、戦術のバリエーションが多かった。冬に取り組んできたことを、関東強豪相手に発揮することができた。チームにとっては大きな自信につながった」

―石垣元気、佐藤龍月の1年生が好投した。
「もともとはベンチに入る予定はなかったが、他選手のケガなどもあり、急遽メンバー入りした。県大会でも少ししか投げていなくて、どのくらいできるかも含めての登板だったが、力を存分に発揮してくれた。新戦力が出てきたことによって、チームに刺激が加わった」

―夏のメンバー選考が難しくなった。
「それは、うれしいこと。メンバー選考に関しては、高校野球は3年生の力がやはり大きい。2年半にわたって積み上げてきたものがあるし、夏はやってきたことが表現される場所。メンバーについては、いろいろな考え方があると思うが、下級生と3年生が同じ力であれば3年生をメンバー入りさせる。最後の大会に懸ける思いは、やはり特別。3年生には、底力がある。1・2年生がメンバーに入るには、3年生を超えていかなければいけない」

―今年の夏へ向けて。
「少し前までは夏へ向けて、(練習で)追い込んできていたが、今年は特別に追い込んではいない。年間を通じてスケジュールを組んでチームを構築していくことによって、選手を段階的に成長させることができるようになってきている。追い込んで仕上げるというよりも、じっくりと熟成させているイメージだ。練習も短い時間で集中して取り組むようにしている」

―追い込まない?
「冬場のトレーニングでは、トレーナーの指導のもとで負荷をかけています。追い込まないというよりも、年間を通じて段階的に上げていっている。選手たちが、意識高くやってくれているので、無理に追い込む必要がなくなっている。全体練習の時間は限られているが、あとは個人の練習で各自が追い込んでいる。今年のチームは、主将の森田光希(3年=内野手)を中心に、主体的に取り組んでくれている」

―今年のチームは、それぞれが役割を理解している印象を受ける。
「森田をはじめ昨年から試合に出ている選手がチームを引っ張ってくれている。さらにそのほかの選手も、チームでの役割を認識して、状況に応じたプレーをみせてくれている。森田、半田真太郎(3年=内野手)、ピッチャーの加藤達哉(3年)も、非常によくやってくれている。強いチームというよりも、良い組織のチームになっている」

―今年の3年生はコロナ禍時に中学3年生。非日常で入学してきた選手たちになる。
「入学当初はなかなか練習ができずに難しい状況だったが、言い訳することなく、環境に応じて、各自が努力してくれたと思う。一緒に行動する時間も限られていたが、先輩たちの姿をみて、自分たちの力に変えてくれた。学習能力の高い選手たちだと考えている」

―春優勝で夏大会へ臨むが、夏は2015年以来、勝てていない。
「先を見るのではなく初戦から一戦一戦、1プレー1プレーに向き合っていくだけ。レギュラー、ベンチメンバーだけではなく、スタンドで応援してくれるメンバーも、同じ健大高崎の一員だ。メンバーを外れた3年生も非常に良い応援をしてくれて、チームを盛り上げてくれている。今年もスタンドと一体になって戦えると考えている。

―関東優勝で夏の大本命になっている。
「受け身になってはいけない。夏は特別な戦い。敵は自分だという気持ちで戦っていく必要がある。周りの声に左右されずに、自分たちの声を信じて戦う。自分たちの野球ができれば、1日でも長い夏を経験できると考えている」

―夏は2015年以来、優勝できていない。
「多くは決勝で前橋育英さんに負けているし、去年は準決勝で樹徳さんに負けている。前橋育英さんに限らず、相手は大舞台で最大限の力を発揮してくる。全国で戦うには、県大会を勝たなければいけない。今年は組織力で戦えるチーム。すべての力を結集して、甲子園へ行きたいと思っている」(7月7日現在)

 

青栁博文(あおやぎ・ひろふみ)
1972年群馬県生まれ。前橋商−東北福祉大。大学卒業後、一般企業に就職し軟式野球でプレー。健大高崎共学化に伴い、2002年に野球部監督就任。創部10年目の2011年夏、甲子園初出場を果たすと、春夏計9度の甲子園出場。チームスローガンは「不如人和」(ふにょじんわ)。戦術スローガンは「機動破壊」。2023年春選抜出場、春関東大会優勝。

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