ノーシードから難敵を撃破した殊勲の準優勝 打線を繋ぎ、チームは一つになった 第105回高校野球選手権記念静岡大会の準優勝は東海大静岡翔洋となった。ノーシードながら堅実な戦いをみせ、決勝進出を果たした。(取材・栗山司)
■難敵を次々と倒して決勝へ
甲子園で勝つチームを作る—。それが昨年、新チームを結成した際の目標だった。しかし、昨年の秋、今年の春ともに県ベスト16止まり。それでも投手を中心とした守りからリズムを作るスタイルを夏に向けてコツコツと磨いてきた。森下倫明監督は「こういう展開に持っていけば負けないんだっていう部分を作ることができるようになった」と話す。 ノーシードで迎えた夏。「1、2回戦は選手たちが緊張していたが、ピッチャーの頑張りが大きかった」(森下監督)。 3回戦までを全て完封勝ちで波に乗ると、強力打線が目覚める。4回戦では常葉大橘相手に圧勝。さらに、選抜大会出場の常葉大菊川、昨夏優勝の日大三島の難敵を下して、2年ぶりの決勝進出を果たした。
■最後まで諦めない
決勝戦の先発を任されたのは、エース左腕の小根澤亘平(3年)だった。初回、2回に失点。リリーフ陣も打ち込まれて苦しい試合展開となった。攻撃陣は4回に反撃。4安打を集中して3点を取り返す。その後、浜松開誠館の猛打を止めることができなかったが、最後まで諦めることはなかった。「どれだけ点差をつけられても、絶対に還すという気持ちでした」(米倉輝主将・3年=捕手)。 三塁側スタンドの大声援を背にして、7回に1点、8回には3点、そして9回にも3連打で意地を見せた。
■今度は笑って甲子園へ
試合後、ベンチで泣きじゃくる東海大静岡翔洋の選手たち。その中で一人、米倉主将は凛々しい姿で報道陣の取材に応じた。「負けてしまいましたが、チームのみんなに感謝したいです。後輩には、またこの舞台に戻ってきて、今度は笑って甲子園に行ってほしいと思います」。また森下監督は「もう一つ、選手たちには新たな景色を見させてあげたかったが、甲子園で勝つという目標があったから、ここまで来ることができた。それに準ずるチームになった」と選手を称えた。 今大会、7試合で本塁打は1本のみ。1番打者から9番打者が繋いで得点を奪っていった。「点ではなく打線で戦う」。チームの新たな伝統は受け継がれる。