元巨人・神田直輝監督率いるダークホース
「投げる」「打つ」の基本を徹底して強豪撃破へ
プロ野球巨人でプレーした指揮官が率いる藤岡北。野球の原点を大切にしながら勝利を追求していく。
■2022年春に農大二を撃破
2012年夏から2021年秋まで9年間公式戦勝利なしの26連敗。その間には部員が減り、連合チームで出場したときもあったという。そんなチームが2022年春にジャイアントキリングを成し遂げた。1回戦で甲子園出場実績を持つ伝統校・農大二と対戦。3回までのスコアは1対5。それでも選手たちは、我慢の戦いを演じた。6回時点で1対7とコールド敗退の可能性もあったが、8回に打線が爆発。打者一巡の猛攻で一挙7点を奪って8対7と逆転に成功すると、そのまま逃げ切った。伝統私学を破っての公式戦27試合ぶりの勝利は県内に大きなインパクトを与えた。チーム一丸でつかんだ勝利。藤岡北は新たな一歩を踏み出した。
■プロの世界で学んだことを還元
選手たちに野球の魅力を伝えているのは、プロ野球巨人でプレーし現役引退後に教員となった神田直輝監督だ。前橋東から群馬大へ進学し準硬式で名を馳せた。大学4年時のドラフト会議で巨人から育成5位指名を受けてプロ入り。ドラフト同期は長野久義らだった。猛者が集うプロでの生活は怪我の影響もあり2年で終わったが、2軍帯同を果たすなど足跡は残した。「当時のエース内海哲也投手ら力のある選手は、グラウンド外でも自立していた。プロの世界で学んだことを還元したいと思った」(神田監督)。教員の道を選ぶと嬬恋、桐生工、沼田を経て2019年に藤岡北監督に就任。当初の部員は9人で同年秋には連合チームでの出場となったが、翌春には単独チームに復帰。チーム基盤を作り上げてきた。
■「投げる」「打つ」がすべて
指揮官が求めるのは「シンプルな野球」という。多くの戦略が存在するが、突き詰めれば「投げる」「打つ」がすべて。神田監督は「プロの世界で感じたことは、野球が極めてシンプルだったこと。野球の勝負はピッチャーとバッターの1対1。高校生たちには、原点の大切さを伝えていきたい」と指導に励む。2023年秋時点の部員数は2年生8人、1年生6人の計14選手。高校から野球を始めた選手もいるなど、レベルは様々。今季のチームは田村清護主将(2年=内野手)を軸に、情熱を持って練習に打ち込む。2023年春は前橋商相手に終盤で接戦に持ち込んだ。また同年秋季大会1回戦では太田工に勝利し、手応えをつかんだ。田村主将は「神田先生からは野球の基本と面白さを教えてもらっています。藤岡北らしい野球をみせて夏に勝利をつかみたい」と話す。藤岡北は2012年以来の夏勝利を目指して邁進していく。