初戦敗退の悔しさが成長の糧に
春はさすがの実力で存在感見せつける
春季は県準優勝で東海大会に出場し、着々と力を蓄えている静岡。王者のプライドを持ちつつ、謙虚に勝利を追求する。(取材・栗山司)
■昨夏、秋の初戦敗退を原点に
春夏通算43度の甲子園出場を誇る静岡。昨年は夏、秋ともに1試合で終わる悔しさを味わった。スローガンに掲げたのは「初志貫徹」。松下球真主将(3年=中堅手)はこう力を込める。「去年の新チームを結成したときに、あの悔しさを忘れないようにしようとスローガンを立てました。その気持ちを最後まで貫いていきます」。
春の県大会では難敵の磐田東、日大三島、浜松開誠館を下して決勝進出。決勝戦は加藤学園に延長タイブレークの末に敗れたが、公式戦を重ねるごとに王者の強さを取り戻していった。
冬の成果が出た春のシーズンでもあった。 「身長マイナス90の体重、体脂肪率15パーセント以下」を意識してトレーニング。スイング力を上げた打撃に、守備も基礎から徹底的に磨いていった。「体のバランスが良くなり、パワーとスピードが上手くパフォーマンスに生かされるようになった」と池田新之介監督は手ごたえを口にする。
■夏に向けて戦力充実
チームの目標は甲子園で勝つこと。そこに向け戦力も充実する。
春の大会で存在感を発揮したのがエースの谷脇健心(3年)。昨年秋は野手兼任の中野桜佑(3年=一塁手&投手)が1番を背負ったが、大会後から谷脇が急成長を遂げる。シーズン最後の「大学野球オータムフレッシュリーグin静岡」で法政大相手に5回3安打無失点で自信を掴むと、オフシーズンは真っすぐの強さを求めて練習を重ね、コンスタントに130キロ台の後半が出るようになった。「夏の甲子園で勝つために自分がしっかり投げていきたい」とエースとしての自覚も生まれている。
攻撃はトップバッターの松下が出塁し、3番・中野、4番・和田琉汰(3年=三塁手)、5番・石垣拳(3年=捕手)が還すパターンが確立。ただ打つだけではなく、池田監督が目指す「スピード感のあるアグレッシブな野球」も定着してきた。
■団結力も高い
今年のチームは選手間の絆も深い。日々の練習では気になることがあれば集まって話し合う機会を設けている。松下主将によると、メンバーに下級生が含まれていることもあり、学年の垣根を越えた繋がりを大事にしているという。「試合になって下級生が気を遣っているようではダメ。日々の練習から強く言い合える関係性を作っています」(松下主将)。長い秋と冬を経験したことで団結力が深まった。
目覚めた名門が、夏は頂点まで一気に駆け上がる。