【作新学院 野球部】「プライド」

10連覇の夢は次の世代へ

栃木大会9連覇中の作新学院。

今夏は10連覇、そして全国制覇を目指して、練習に励んでいたが、コロナ禍によって甲子園が中止となった。

選手たちは、作新のプライドを胸に最後まで戦い抜く。

2020年8月号掲載
(取材・永島一顕)

■ 栃木県大会10連覇の夢

夏季の栃木県大会10連覇を目指していた作新学院の大きな夢は、見えない敵の前に打ち砕かれてしまった。

今夏の甲子園への道が消えてしまった時、「言葉に表せない思い。一体、何が起こったのだろうという悔しい気持ちになった」とグラウンドマネージャーの粒良優太学生コーチ(3年)。

特に最後の夏を迎える3年生にとっては、途方に暮れるしかない心情だった。

「昨秋の県大会で負け、冬場、3年生は地道にトレーニングに取り組んできた。(どれだけ戦えるのか)春に試したいチームになったなと感じていた」と小針崇宏監督。

今年の作新は、昨年の高校日本代表でドラフト候補の大型外野手・横山陽樹(3年)を軸にスケールの大きなチームに仕上がるはずだった。

指揮官の表情からは、V10を成し遂げようと選手たちが必死に練習してきた「成果」、そして彼らの「底力」を夏季大会で確かめられないことへの無念さが伝わってくる。

■ 特別な「2020夏」へ

鈴木蓮主将も、夏の大会の中止が決まった時はさすがにショックだった。

それでも、家族から「今だからこそ、主将としてしっかりやらなくてはいけない」と叱咤激励を受けたことも心の支えとなり、気持ちを切り替えてチームのけん引に努めた。

鈴木主将と二人三脚でチームをまとめてきた粒良マネージャーには、小針監督からの「(夏を)目指してきたことに変わりはない。

そのことを大切にして最後までやっていこう」という言葉が心に残っている。

夏季大会の中止でガックリと気落ちした選手もいただろう。

でも、全選手が小針監督の言葉を胸に、一丸となって「2020年の夏」に向かって挑んでいる。

■ 精神的に成長した選手たち

チームは5月23日、練習を再開した。

「仲間とともに好きな野球ができるといううれしい気持ちも湧いてきた」と鈴木主将。

今はその思いを噛みしめながらグラウンドに立ち、自身にとっての最後の夏では、「皆で集中して臨み、自分たちの持てるものを出し惜しみせずプレーしたい」。

小針監督は「苦境を乗り越えた選手たちは精神的にも成長したように感じる」と選手を見守る。

6月中旬、作新学院のグラウンドでは選手たちがキビキビとした動きを見せ、気合のこもった掛け声とともに打球音がこだましていた。

甲子園大会はなくなったが、作新のプライドは選手の胸に刻まれる。

代替大会では、プライドみなぎるプレーを見せてくれるに違いない。

作新学院高等学校

【学校紹介】
住 所:栃木県宇都宮市一の沢1-1-41
創 立:1885年
甲子園:25回(春10回・夏15回)
硬式野球部は1962年に全国初の春夏連覇を達成した伝統校。OBに江川卓(元巨人)、今井達也(現西武)ら。2016年夏に54年ぶりの全国制覇。栃木県大会9連覇中。

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