秋初戦敗退からスタートしたチームが粘りの快挙
目標の「甲子園ベスト8」に向け強化し続ける

第106回高校野球選手権静岡大会は、掛川西が26年ぶりの優勝を遂げ幕を閉じた。(取材・栗山司) 

■秋初戦敗退からのスタート

7月29日12時33分。OBやファンが待ちに待った瞬間が訪れた。9回二死、エースの高橋郁真(3年)が中堅フライに打ち取ると、三塁側スタンドから大歓声が沸き起こった。
 大石卓哉監督が主将を務めた1998年以来26年ぶり6度目の優勝。試合後のインタビューで指揮官は声を詰まらせた。「選手たちが悔しい負けから毎日毎日、掛川西高校のグラウンドで汗を流した結果だと思います」。
 昨秋は初戦敗退。わずか1試合で終了した。失意のどん底の中でチームは「甲子園ベスト8」という目標を掲げた。中心となったのは主将の山下陸人(3年=内野手)だった。「守備、走塁、攻撃のすべてでレベルアップしないと夏は獲れないと思った」と自らユニフォームを泥だらけにして練習に取り組んだ。合言葉は「今日も強化」。強くなるために、この言葉を繰り返し発して乗り越えてきた。

■投打が噛み合って頂点へ

「初戦から簡単に勝たせてもらえる試合は1つもなかった」と大石監督。ターニングポイントとなったのは4回戦だった。2年前の準決勝で延長13回タイブレークの末に負けた日大三島に対し、終盤の再三のピンチをしのいで1点差勝利。準決勝では春に敗れた加藤学園に雪辱した。
 迎えた聖隷クリストファーとの決勝戦。投打ががっちりと噛み合った。4回戦以来のスタメンとなった杉山侑生(3年=外野手)がタイムリー2本で5打点の大活躍。投げては高橋が「バックのみんなを信じて投げることができた」と緩急を使う投球で相手打線に的を絞らせず。9回には鈴木脩平(2年=内野手)がダメ押しとなる本塁打を放った。
「キャプテンの山下を中心にどんなときもめげず、苦しくても前を向いてグラウンドに立ち続けた。それがこのチームの強さにつながっていると思います」
 大石監督はそう話し、頂点をつかみ取った選手たちを誇らしげに見つめた。

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