春夏甲子園16度の出場を誇るY校
130年の伝統の重みを力に変えていく

春夏甲子園16度の出場を誇る伝統校・横浜商。1990年以来35年ぶりの夏甲子園を狙うチームは、昨秋から新たな指導体制でチーム強化を図る。名門復活へY校の士気はさらに高まっている。

■新たな指導体制で35年ぶりの甲子園へ

 横浜商は、春9度、夏7度の甲子園出場を誇っている神奈川伝統校。ライトブルーの下地にYの文字が刻まれたユニホームをまとったチームは、1983年に春夏連続で甲子園準優勝となり全国にY校大旋風を起こした。1989年選抜でもベスト4へ進出するなど力を誇示したが、夏は1990年、春は1997年を最後に聖地から遠ざかっている。復活を期すチームは2023年夏に進撃をみせると横浜スタジアムでの準決勝へ進出。横浜に屈したものの伝統復活の布石を打ち込んだ。今年の2年生は、先輩たちの勇姿を横浜スタンド応援席で観た選手たち。さらに、その戦いをみていた当時の中学生たちがY校の門を叩いている。チームは昨夏大会後に菅沼努監督が勇退し、新たな指導体制となった。

■廣濱優監督、泉田浩道部長体制で指導

2018年から副部長、部長を歴任しチームを支えた廣濱優監督が昨秋から指揮を任された。部長には、元桜丘の泉田浩道前監督が就いた。Y校は2014年にスポーツマネジメント科が設けられて、生徒たちの人気が高まっていた中でチーム力も向上。再び頂点を狙える場所に辿り着いている。横浜商大高出身の廣濱新監督は「部長と監督はまったく別の立場。130年の伝統の重みをあらためて感じている」と心境を明かす。チームは1学年30人を超える大所帯。部員が多いため全体メニューは班ごとに分かれている。一体感を生み出すため練習の最後は全員で声を出しながら200スイングを振り切り、1日を終えている。指揮官は「まずは人としてどう成長するか。レギュラー、控えの枠は関係なく同じY校の選手。それぞれが役割を果たすことでチーム力が高まっていく」とグラウンドに立つ。

■ソフトバンク笹川の活躍が刺激

35年ぶりの甲子園を視野に入れるチームは、攻守のセンスが光る松本大誠主将(2年=内野手)と、身長187センチ94キロの大型右腕エース山口櫂(2年)が屋台骨となる。エース山口は、Y校OBの元巨人右腕・山口鉄也氏を彷彿とさせる大器だ。さらに田中健太(2年=内野手)、石川峻(2年=外野手・投手)らタレントがしのぎを削る。昨秋は4回戦で武相に屈したが、Y校130期となる1年生も力を伸ばしレギュラー争いは熾烈だ。昨秋のプロ野球日本シリーズでは、Y校出身のソフトバンク笹川吉康(2020年ドラフト2位)が出場し、後輩たちに勇気を届けた。松本主将は「このグラウンドで練習した先輩が大舞台で活躍する姿をみて刺激になった。多くの先輩に支えられているので伝統を力に変えて甲子園を目指していく」と気持ちを込める。130年の歴史を重ねたチームは、地域の思いを背負いながら聖地を目指す。甲子園への航路ははっきりと見えている。

おすすめの記事