
3年上田一心が粘りのピッチングで完封
選手たちの成長実り春の頂点
春季静岡県大会は聖隷クリストファーが初の頂点に立った。チャンスを確実に生かす戦いで見事な完封勝利。夏に向け、さらに期待が高まる。(取材・栗山司)
■悔しさを力に変えて
この日、先発を任されたのはスリークオーター右腕の上田一心(3年)。「チャンスをもらったので、『よしやってやる』という気持ちでした」。
1年秋から公式戦に登板してきたが、思うような結果は残せなかった。2年夏の3回戦では先発を任されるも、3回途中までに4失点を喫して降板。その間に1学年下の高部陸(2年)が台頭し、昨秋はエースとして県大会から東海大会までを一人で投げ抜いた。「高部を一人にしてしまって申し訳なかった。悔しかったです」。
その悔しさをバネに、冬は「球速を上げてストレートで勝負できる投手になろう」と必死にトレーニングに打ち込んだ。そして迎えたこの日。「やってきたことに自信があったので、緊張はありませんでした」と、初回から力強く腕を振って勝負に挑んだ。
回を重ねるごとにストレートの威力が増し、6回の1死一、二塁のピンチも「集中して投げることができた」と、強気の姿勢を崩さずに切り抜けた。
■渡部が有言実行の一打
上田の気迫に打線も応えた。7回、2死一、二塁のチャンスで打席に立ったのは、3番・渡部哉斗(3年=内野手)。5回のインターバル中には上田に「絶対に決めてやるからな」と声をかけていた。低めの変化球をとらえた打球は右中間を破り、2者が一気に生還。試合を決定づけるタイムリー三塁打となった。
そして9回裏。最後の打者を打ち取った上田は右拳を大きく突き上げてガッツポーズ。わずか4安打に抑える完封劇。「まだ実感がわかないです」と涙をこらえ、上村敏正監督も「これくらいはできる選手。よく踏ん張ってくれた」とその成長を称えた。
■悲願の甲子園出場へ
聖隷クリストファーは初めての春制覇。大会を通じて、安定した戦いぶりを見せた。決勝戦でも持ち味の堅守と、限られたチャンスを確実に生かす勝負強さが光った。だが、主将・逢澤開生(3年=外野手)は慢心しない。「もっと点を取れる場面で一本を出せるように。技術も、気持ちの強さも、さらに向上させていきたいです」。
春の東海大会を経て、見据えるのは勝負の夏。甲子園初出場に向けて、チームはさらにギアを上げていく。






