
聖隷クリストファー 悲願の初優勝
コロナ禍の優勝から5年
苦難を乗り越え甲子園への道がついに開ける
第107回高等学校野球選手権静岡大会は、聖隷クリストファーが悲願の優勝を成し遂げ、閉幕した。(取材・栗山司)
■決勝戦で2年生エースが力投!
「やっと行くことができた」上村敏正監督のその一言が、すべてを物語っていた。
2020年夏は県優勝を果たすも、コロナ禍で甲子園大会が中止。2021年秋は東海大会で準優勝したものの、選抜大会出場は叶わず。そして昨夏は、県決勝で敗退。あと一歩のところで、甲子園には届かなかった。
第1シードとして臨んだ今夏。決勝戦は初回2死走者なしから畳みかけた。3番・武智遥士(3年=捕手)の四球と4番・渡部哉斗(3年=内野手)のライト前安打で一、二塁のチャンスを作ると、5番・谷口理一(3年=内野手)が左中間を破る2点タイムリー。「何を打ったのか覚えていませんが、“ここは一本打つぞ”と集中しました」と、勝負強さを発揮した。
投げては2年生エースの髙部陸が力投を見せた。準決勝で6者連続三振を奪った勢いそのままに、決勝の舞台でも臆することなく腕を振った。140キロ台のストレートに、この1年間で磨いてきた変化球を絡め、相手打線を翻弄していく。
迎えた9回。「1球1球に気持ちを込めました」と語るように、持てる限りの力を注いだ。そして135球目、その瞬間は訪れた。セカンドゴロに仕留めると、両手を突き上げた。「夢に見てきた甲子園。その夢が叶って、嬉しい気持ちでいっぱいです」。泣きじゃくる髙部に、上村監督は「よくやったな」と声をかけた。
■主将不在を乗り越えて
主将・逢澤開生(3年=外野手)のためにも、負けるわけにはいかなかった。春の東海大会中に左腕を骨折し、今大会はベンチを外れた。
決勝戦前、逢澤はベンチ入りメンバーに「頑張れ」と、シンプルに一言。それだけで十分だった。「この1年間キャプテンをやらせてもらって、これ以上ない大きなものを返してくれたと思います」
■あと一歩を叶える
チームは逢澤を中心に、「あと1つ勝ち切る」ことをテーマに取り組んできた。日々の練習から実戦を意識し、全員が良いことも悪いことも言葉に出して、互いにレベルを高め合ってきた。さらに、春の東海大会でミスによって敗れた経験から、プレーの精度を高め、夏につなげた。
浜松商、掛川西、聖隷クリストファーの異なる高校を率いて3元号(昭和・平成・令和)での甲子園出場を決めた上村監督はしみじみと語る。「本当に各年代、それなりに頑張って、みんないい結果を出してくれて。それがあったから、この子らが勝てたんじゃなかったのかなと思う」
苦しみ抜いた日々が、ようやく報われた。溢れた涙の分だけ、この優勝は何よりも尊く、重かった。