今夏西東京で学校初の3勝
名門附属校の新たなチャレンジ
中大杉並は、今夏の西東京大会でベスト16進出を果たした。
そして4回戦では東海大菅生と1対2の熱戦を繰り広げた。
名門附属校の新たなチャレンジが始まっている。
2020年11月号掲載
■2019年夏からOB指揮官
2018年度までは、大学生コーチが1年ごとに指導していた。
学生コーチは熱心な指導をしてくれていたが、チームの方向性が1年ごとに変わるなど難しさもあった。
また選手の特長や身体能力とチームスタイルがマッチしないケースもあったという。
野球部盛り上がりを支援する中大杉並OB会は、選手たちのために監督派遣を発案。
最終的にOBの阿部徹氏が自身の仕事と並行して、後輩たちの面倒を見ることになった。
阿部監督は2019年6月からチームを指揮、中大杉並の野球を確立すべくグラウンドに立った。
OB指揮官が求めたのは「自己犠牲」。
選手たち個人の力は限られている。
だが、それぞれが役割を果たせば、強豪ともしっかりと戦える。
阿部監督は、高校野球本来の魅力を選手たちに伝えたかった。
■4回戦で東海大菅生に善戦
新監督就任から1年後、チームは大きな成長を遂げた。
昨秋は1次予選1回戦で聖パウロ学園にサヨナラ負けを喫したが、選手たちはその悔しさをバネに努力を続けた。
そして今夏、木村陸主将(3年=捕手)、古澤耀之丞(3年=投手)、吉川享成(3年=外野手)らを軸に、一戦一戦を勝ち上がっていった。
1回戦で都立武蔵、2回戦で桐朋、3回戦で成瀬を撃破し、ベスト16へ進出。
夏に3勝したのは、学校史上初という。
4回戦の相手は、東海大菅生。
周囲の予想は「菅生の圧勝」だったが、ゲームは予想外の展開となる。
中大杉並の先発・奥山範丈が菅生打線を抑えて0対1で8回へ。
8回、4番・木村のセンターへの打球が太陽と重なり、センター前へ落ちるラッキーな形で1対1の同点へ。
最後は、9回裏にサヨナラ負けとなったが、菅生を追い詰めた戦いは今大会の驚きの一つとなった。
■新たなチャレンジにしたい
夏大会後、2年生8人、1年生13人の新チームが始動した。
前チームは3年生が主体だったため、経験値の浅いチームだが、糟谷侑希主将(2年=内野手)、福島健斗(2年=内野手)を中心として意欲的に練習へ取り組んでいる。
阿部監督は、1年生を含めた選手たちのポジション適正を見極めながらテストを重ねている。
その一方で投手陣の整備にも力を入れ、1年生の松崎圭佑、吉岡真輝にマウンド経験を積ませている。
阿部監督は「秋大会が始まるが、秋・春・夏の1年間を通じて選手の成長を見守っていく。メンタルも鍛えて結果を追求していく」と話す。
糟谷主将は「3年生たちは試合で楽しむために厳しい練習をしていた。僕らも試合で力を発揮できるように努力していく」と胸を張る。
中大杉並は、夏の3つの勝利を励みに、次なる戦いへ向かう。