【レジェンドインタビュー】公立高校からドラフト1位でプロへ 最速154キロのエクスプレス内 竜也(元千葉ロッテマリーンズ) #内竜也

公立高校からドラフト1位でプロへ
最速154キロのエクスプレス
内 竜也(元千葉ロッテマリーンズ)

「公立、私立関係なく、  いま自分がいる場所で何をするかが大切」

公立校・川崎工からドラフト1位で千葉ロッテマリーンズに入団した快速右腕・内竜也。今年現役引退を決めた最速154キロのエクスプレスが球児にメッセージを送る。

中学時代はバスケ部所属

―高校時代を振り返って?  

「川崎工は強豪ではなく普通の公立高校だったので、今思えば、よくプロに行けたなと思います。運もあったと思いますし、いろいろな縁に恵まれてプロに進むことができました。そこに関しては感謝しかありません。学校生活は、僕は機械科だったのですが、溶接の授業が楽しかったです」

―野球部の練習はどんな雰囲気だったのでしょうか?  

「当時の野球部独特の厳しさとかはなく、良い先輩、同期、後輩に恵まれて良い雰囲気で野球を楽しむことができました。僕の場合は、自由な環境で野球ができたことが成長につながったと感じています」

―公立高校を選んだ経緯は?  

「中学時代は2年間、バスケ部に属していました。野球は好きだったのですが、中学校に上がるときに坊主頭になるのが嫌で野球部には入らなかったのです。中学校2年生の体育祭で応援団になり坊主頭になったことで吹っ切れて、中学校2年生冬に野球部へ入りました。野球部員からはずっと誘われていたので、一緒に野球をやりたいと思いました。始めたのが遅かったので、私立からは声がかかるはずもなく、自分で行きたい高校を選びました」

―応援団に指名されなかったら野球をやっていなかったかも?  

「そうかもしれません。そのままバスケをやっていたと思います。高校では野球がやりたいと思っていましたが、どうなっていたかわかりません。その意味では、応援団に誘ってくれた怖い先輩に感謝しています(笑)」

―球児の髪型について?

「いまは坊主以外のチームが増えていますが、自由でいいと思います。坊主にしたい選手がいればすればいいですし、伸ばしたければ伸ばせばいい。髪型で野球をしているわけではないので。ただ、髪型を気にして野球に集中できないのであれば短い方がいいと思います。僕の場合は、高校時代に散髪にお金をかけたくなったので坊主が楽でした」

高校2年でスライダー習得

―川崎工時代に努力したことは?  

「普通の公立高校と同じ、普通の練習です。近くに多摩川の河川敷があったので、みんなでそこを走っていたのを思い出します。そんなにきつい練習をしていたわけではなく、とにかく野球を楽しんでいました。坊主頭? もちろん坊主です(笑)。一度、坊主にしたら抵抗はなくなりましたし、坊主の方が楽だと感じました(笑)」

―ピッチャーとしての転機は?  

「高校2年生のときに変化球の投げ方を自分で考えて、スライダーがうまく投げられるようになったのです。そこからストレートとスライダーを軸としたピッチングができるようになっていきました。ストレートよりもスライダーの方が自信があったので、スライダーで三振が取れるようになったのが大きかったと思います。握りとか角度を工夫しながら、自分で感覚を身につけたことがプロになってからも財産になりました」

―試合で印象に残っていることは?  

「2年生の夏に初戦で負けたことです。3年生がいる中で先発を任せてもらったのですが、5回までに5失点して負けてしまいました。先輩たちに申し訳なかったという気持ちは今でも残っています。その敗戦で自分の意識が変わりました」

ロッテから1位指名

―どんな練習だったのでしょうか?  

「川崎工は、先生が毎日来るような環境ではなかったので、自分たちでノックを打って、自分たちで練習を考えていました。やらされているのではなく、自分たちで考えてみんなでやっていた印象です。それが良かったと思います」

―3年生の夏はベスト8に進出した。

「本当に楽しかったです。自分のピッチングとかよりも、努力してきた仲間たちと勝利を味わえたことが一番の喜びでした。準々決勝は桐光学園との対戦で、8回表まで勝っていたのですが、その裏に逆転されて結果的には僅差で負けてしまいました。終わったときは悔しさよりも、寂しさがありました。甲子園に行けない悔しさはなく、むしろ清々しい気持ちでした。川崎工で野球をやってきて本当に良かったと思いました」

―プロへの気持ちは?  

「小学校時代から、プロに行くことだけしか考えていませんでした。大学にも行くつもりがなかったので、プロに行けなかったら、就職しようと考えていました。だから、プロのスカウトの方々が高く評価してくれたときは、めちゃめちゃ嬉しかったです」

―ロッテからドラフト1位指名を受けました。

「身の引き締まる思いでした。夢にまで見たプロの舞台だったので嬉しかったのですが、本当に自分が1位でいいのかという戸惑いもありました。それでも強豪ではない普通の公立校でもプロに行けるということを示せたのは良かったかなと思いました」

―プロ経験を踏まえて高校生に伝えたいことは?

「高校でしか味わえない経験というのが絶対にあると思いますので、“今”を大切にしてほしいと思います。多くの球児にとって高校野球はクライマックスだと思いますので、瞬間を大事にして完全燃焼してほしいと思います。高校野球は一発勝負のトーナメントですので、自分たちに厳しく向き合えたチームに勝利が届くのかなと思います」

―公立と私立の違いは?  

「僕は公立からプロに行きましたが、私立だったらどうなっていたのかと考えたことも、もちろんあります。いま言えることは、公立とか私立とか関係なく、いまの場所で全力を尽くすことが重要だということです。環境ではなく、すべては自分次第です。自分が選んだ道で、自分らしく努力することが大切なのではないでしょうか。公立高校でプロ野球選手を目指すことは不可能ではありません。夢に向かってチャレンジしてほしいと思っています」

 

profile

内竜也(うち・たつや) 1985年7月13日神奈川県生まれ。川崎工(現川崎工科-ロッテ)。2003年のドラフト会議でロッテから1位指名。2004〜2020年までプレー。2021年に現役引退し解説者として活躍するほかYouTube「うっちんチャンネル」を開設。

 

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