地域と共に戦う野球部
春季大会では作新学院に善戦
小さな町の野球部が地域に勇気を届けている。春季大会で名門校相手に堂々たる戦いをみせた茂木は、「山の子魂」というスローガンを掲げて地域と共に戦っていく。
■小さな町の愛される野球部
栃木県南東部に位置する茂木町は人口1万2千人弱。小さな町の茂木野球部は、2016年夏に快進撃をみせてベスト4へ進出するなど地域に勇気を届けている。だが、その後は部員減少に直面。1学年の人数は5人前後、試合メンバーを揃えるのにも苦労した中で、2017年からは茂木高校出身のOB指揮官・佐山浩行監督が着任。地域の指導者たちの協力を仰ぎながら、さらなるチーム強化に取り組んだ。佐山監督は「山間部チームの部員が減っている中で、地域の力になっていきたい」と話す。中学時代に実績を上げた選手は都市部強豪校から誘いがかかる中、茂木を選択してくれた選手たちの力を伸ばすべく球児に寄り添う。選手たちは、佐山監督の指導のもと学校近くの山あいの専用グラウンドで日々のトレーニングに励む。
■多くの1年生が入部し部員28人へ
3年生はわずか6人だが、2年生は10人。今春は12人の1年生が入部した。3学年合わせての人数は28人。この人数で練習ができるのは、近年では想像できないことだった。茂木は1年生入部後にチーム全員でウェルカムノックを実施しているが、1つのポジションに2〜3人が入り、活気あふれる声が飛んだという。佐山監督は「あのシーンを見たときに、グッとこみ上げてくるものがありました。地域の協力によって部員が増えていることに改めて感謝しなければいけないと思いました。これを継続していくことでチームは必ず強くなっていくと思います」と想いを込める。
■試合はバスから始まっている
チームスローガンは「山の子魂」。選手たちは、冬の厳しいトレーニングを乗り越えて強くなっていく。蓄えた力を発揮するためにはどうすればいいか。指揮官は、選手たちの気持ちを開放するため、試合へ向かうバスの雰囲気を変えていったという。ムードメーカーの小口明浩(3年=外野手)を司会進行役にして、選手たちが試合への意気込みを叫ぶ。それを小口が盛り上げて、最高潮のムードでゲームに挑んだ。士気上がるチームは春大会地区予選で伝統校・真岡工に勝利して本大会へ進出。1回戦で那須拓陽に勝利すると2回戦で作新学院と対戦、3対5で惜敗となったが相手を追い詰める戦いを演じた。小森彗輝主将(3年=内野手)は「作新戦は自分たちの戦いができたが、最後のひと押しが足りなかった。個人の力では勝てないので、そこを声で補って戦っていきます。部員も増えてきているのでここから新しい歴史を作っていきます」と目を輝かせる。山の子たちの戦いは、地域の希望になる。
(2021年8月号掲載)