ジャイアントキリング、そして甲子園へ
公立旋風を起こすのは自分たちだ
県下屈指の進学校・川和は、昨夏の神奈川大会4回戦で東海大相模を追い詰めるなど力を示した。昨夏を経験した主力が残る今年のチームは、ダークホースになる可能性を秘めている。
■昨夏・秋は強豪相手に惜敗
昨夏の4回戦が記憶に新しい。昨年の選抜優勝校・東海大相模と対戦した川和は、エース吉田悠平の好投によってロースコアの展開でイニングを進めていった。2回に1点ずつが入ったゲームは終盤まで1対1。ジャイアントキリングの雰囲気が漂う展開に、どよめくスタンド。ネット速報は著しくアクセス数を伸ばした。1対1のまま8回を終えたが、9回1死から王者の強さを見せられ1対7での敗戦となった。2年生レギュラーとして出場した青柳知樹主将(3年=内野手)は「1イニングを守り抜くたびに勝てるんじゃないかと思った。先輩たちの戦いから多くのことを教えてもらった」と振り返る。川和は昨秋県大会でも向上相手に延長戦までの接戦を演じた。1対2の惜敗となったが、これらの戦いぶりは公立校に勇気を与えるとともに、チームの大きな可能性を示した。
■個性を融合し強いチームへ
今年の3年生は28人(マネージャー4人)。例年と比較して、人数が多い学年だ。コロナ禍の2020年春入学で多くの制限があったが、一つの方向を向いて切磋琢磨してきた。攻守のキーマンである中村惇(3年=内野手)は「この学年は個性のある選手が揃っている。個性が融合できれば、私学強豪に負けないチームになる」と話す。伊豆原真人監督は、育成のキーワードとして「守破離(しゅはり)」を挙げる。武道などの修行の過程を示すもので、守は「型を身につける」ための基本習得の時間、破は「良いと思うものを取り入れる」第2段階、離は「型を踏まえて自分の形を作り出す」応用の時期だ。伊豆原監督は「基本を飛び越えて、自己流にこだわると成長が難しい。多くを吸収して、取捨選択しながら自分自身に落とし込んでいくことが大切です」と語る。
■勝利という結果をつかむために
昨夏を経験した3番・青柳主将、走攻守揃ったリードオフマン三枝木優太(3年=外野手)が軸。クラッチヒッター中村、勝負強い打撃をみせる4番・植木元太(3年=内野手)らが打線のつながりを呼ぶ。植木は「自分たちが勝ち上がるこことで神奈川に公立旋風を起こしたい」と夏を待つ。投手陣は、184センチの右腕・小林泰輝(3年)、威力あるストレートを投げ込む齋藤航(3年)の継投で勝負していく。今春は2回戦で湘南に15対13で打ち勝ち、3回戦では桐光学園に3対8で屈した。指揮官は「(昨夏・秋に)良いゲームができたが、結果を残すことはできていない。プロセスも大事だが、勝利という結果をつかむために何が必要かを選手たち自身が考えてほしい」と話す。青柳主将は「夏も秋も終盤に突き放された。強豪を倒すには、終盤に強くならなければいけない。勝利への執着心を持って戦っていく」と夏へ向かう。もう善戦では満足できない。ジャイアントキリングの先に甲子園が待っている。