今春は名門・静岡撃破し県内騒然。
指揮官と選手のコミュニケーションを軸にチーム強化
2019年春の中部大会2回戦で名門・静岡を撃破した静岡西。
進化を遂げるチームは「全力発声」をスローガンに高みを目指す。
(取材・栗山司)
■ 「全力発声」で静高を撃破!
静岡西はこの春、名門・静岡を撃破し、一躍その名を県内に轟かせた。
中部大会2回戦、6回に3点を先制すると、左腕の山梨勝也(3年)が緩い変化球を巧みに使って1失点完投を飾った。
スタンドから試合の様子を見守った現主将の奥村哲生(2年=内野手)が振り返る。
「先輩たちは静高という相手を前にしても怯むことなく声が出て、スローガンの『全力発声』が出来たから、勝てたと思います」
試合でも練習でも、一人ひとりが全力で声を出し、チームを盛り上げる。
それが静岡西のスタイルだ。
その後、夏の大会は2回戦で静岡と再戦。
2対9(8回コールド)で敗れるも、「強いチームが相手でも自分たちの野球ができれば勝負できる」という精神は新チームにも継承されている。
■ 選手の多くは「体育コース」に所属
公立校では珍しい「体育コース」が設けられている静岡西。
野球部の多くは、同コースに所属する。
スキー実習、マリン実習、ゴルフ実習がカリキュラムに組み込まれ、多様なスポーツに親しむことができるのが特徴だ。
奥村主将も「体育コース」に所属する一人。
「体を動かすことは楽しいし、野球と共通することがたくさんある」と話す。
例えば、ゴルフ実習。
ボールを遠くに飛ばすスイング軌道の形を学び、野球にも生かしている。
「ゴルフもバッティングも、体が開いてしまったらボールが飛びません。
ゴルフをプレーしたことで、バッティングのコツも掴みました」
一方で、部活動の時間は短い。
全校下校の時間が定められている関係で、練習は3時間弱となる。
その中で、志田真佐和監督が力を注ぐのが守備。
「守りからリズムを作りたい」と、ノックなどで鍛えている。
秋の大会は、初戦の清水東戦で9得点を挙げ、敗者復活戦の静岡大成戦では10安打を放った。
だが、ともに敗戦。
「いくら打てても、失点を減らさないと試合で勝てない」と志田監督、選手ともに口にする。
■ 中学野球の指導を生かす
そんな日々の練習メニューは主将と副主将が決め、そこに志田監督がアドバイスを送る。
「私から選手へ一方通行のチームにはしたくない。
選手とコミュニケーションをとりながらレベルアップしていきたい」。
そう話す志田監督は中高交流研修で、昨年まで中学野球の指導を行っていた。
約2年半チームを率い、県出場に導いた経験を持つ。
「中学の前は磐田北などの高校で指導したが、中学野球に携わって勉強になった部分が多くある。
一番は選手たちにどう練習の意味を知ってもらうか。
そこは高校生よりも中学生の方が時間を割いた」
今年、高校野球を再び指導する立場となったが、以前よりも選手と近い距離で選手と接する。
「同じ練習でも、選手が理解を深めて意図が分かって行う練習と、分かっていなくてただ行う練習では効果が違うと思う。
その上で声を出すことを大事にしている」
志田監督の下、来春の県大会出場という目標を胸に、「全力発声」で前へ進む。
静岡県立静岡西高等学校
【学校紹介】
住 所:静岡県静岡市葵区牧ヶ谷680-1
創 立:1977年
甲子園:なし
生徒は「総合コース」と「体育コース」に分かれる。
「体育コース」ではスキー実習やゴルフ実習などを行う。
OBにはリオデジャネイロ五輪陸上200m日本代表の高瀬慧がいる。
野球部は夏ベスト4が最高成績。