個性を磨いて進撃のサクセスストーリーへ
1・2年生の力を融合しベスト4以上へ

 米国マイナーリーグや豪州、そして国内独立リーグでプレーした指揮官が指導する八王子実践。選手の個性をみがくスタイルでサクセスストーリーを狙っていく

■海外での野球経験を伝える

「ボールが多いけどホームの幅に来ている。リリースポイントを意識して叩きつけろ」「いまのプレーは良かったぞ。その感覚を忘れるな」。八王子実践のグラウンドには、河本ロバート監督のポジティブなアドバイスが飛び交っている。
 アメリカ人の父を持つ河本監督は、中学までサッカーの有望選手だったが、八王子実践入学後に野球を始めて、剛腕ピッチャーとして注目された。亜細亜大卒業後にアメリカへ渡るとマイナーリーグに挑戦。最速157キロをマークするなど注目を集めた。その後は豪州、台湾、国内独立リーグでプレー。多くの国での野球経験を活かして母校のコーチとなり2019年から監督としてチームをまとめている。「いろんな国でプレーしましたが、高校野球にしかない良さがあります。野球の魅力を選手たちに伝えていきたいと思います」

■個性を磨いていくチーム

生徒たちは、「監督」ではなく「ロバートさん」と呼ぶ。河本監督は「海外では指導者と選手は上下関係ではないことが多い。僕は、実績のある選手ではないですし、監督という感じではないです。選手の力を引き出していくことが自分の役割です」と微笑む。指導は、短所を注意するのではなく、長所を気づかせて個性を磨いていくこと。中学時代には実績のなかった選手たちが多いが、八王子実践というラボ(研究室)では2年半という時間を通じて選手たちが大きく成長していく。今年のチームは、ピッチャーとして最速141キロ、打者としてパワー全開のバッティングをみせる二刀流・岡本優誠(2年=投手・内野手)がプロ野球スカウト陣の視線を集める。岡本は「自分が一番成長できる環境として実践を選びました。ロバートさんが、いろんな角度からアドバイスをくれるのでプラスになります」と将来のプロ入りを目指す。練習場は内野ダイヤモンドほどの広さの校庭と打撃ケージで、環境は恵まれていないが、平日はそれを逆手にとって効果的なトレーニングを積む。

■次のステージへの“橋渡し”

キーワードは「スマイル野球」。選手たちは、自身の可能性を伸ばすために自主的に努力を積み上げていく。2025年の夏大会でベスト4以上を目指すチームは、レギュラーの半分が1年生という若いチーム。二刀流・岡本、井戸川遥紀主将(2年=外野手)、小宮瞬太(2年=内野手)の2年生キーマンに加えて、近藤秀人(1年=外野手)、大塚逸輝(1年=捕手)、塚原翔太(1年=投手)ら1年生がチームを支える。井戸川主将は「1・2年生の力を融合して春・夏に結果を残していきたい」と意気込む。河本監督は「スマイル野球は、笑顔の意味もありますが、選手にとって“一番良い顔”でプレーしてほしいという思いを込めています。選手が良い顔でプレーすれば絶対に力が伸びていきます。自分はその成長を後押しして、次のステージへの“橋渡し”をしたいと思っています。このチームを選んでくれた選手たちとサクセスストーリーを作っていきたい」と力を込める。2025年、八王子実践は情熱のスマイル野球で勝ち上がっていく。

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