
スター不在だからこそ全員の底上げを意識
充実の投手陣を軸に公式戦初勝利を目指す
昨秋は無念の予選初戦敗退を喫した静岡大成。入学以来、公式戦ではまだ勝利の喜びを味わえていない新3年生が、初勝利を目指す。(取材・栗山司)
■限られたスペースで練習
2004年に創部した静岡大成。校内にあるグラウンドは内野部分のみ。取材日には内野手が守備練習に励み、外野手がティーバッティングに取り組んでいた。限られた環境の中で、工夫しながら「やれることをやろう」という意識が伝わってくる。2011年秋より指揮をとる横山力監督はこう話す。「この環境の中で、ウチを選んでくれた選手に感謝したい。その中で地元の選手たちの頑張りで盛り上げたいという気持ちを持っている」。現在は新3年生10人、新2年生17人で活動する。
■走塁の精度を高める
新3年生は入学後、公式戦での勝利を経験していない。昨秋の県予選では初戦敗退。初回に3点を先制したものの、逆転負けを喫した。新チーム結成後から取り組んできたのは、出塁したら必ず1点を獲る野球だ。「140キロを投げたり、ホームランを打てたりするバッターがいない分、一人ひとりが力を合わせていくことが大事だと思っています」。(石切山來々主将・3年=外野手)。しかし、秋はそんな自分たちの野球を貫けず、悔しい敗戦となった。
大会後は1点を獲るための精度を高めるため、走塁練習に力を入れた。リードの範囲を確認し、相手投手の球がワンバウンドしたらスタートを切る「ワンバウンドゴー」を徹底。また、打撃ではフライアウトを減らすため、常に低い打球を意識。その積み重ねが、細かい野球の浸透につながっている。
■目標達成に向けて
今年の静岡大成は充実した投手陣を誇る。中心となるのがエース左腕の鈴木陽登(新3年)。中学時代はケガの影響もあって外野を守っていたが、高校入学後に投手となった。キレのあるストレートと多彩な変化球を駆使し、打たせて取る投球を展開する。右腕の漆畑励都(新3年)は180センチの長身を生かし、縦のブレーキのきいたカーブで勝負する。新2年生では横山監督が「将来は140キロを投げてほしい」と期待する小泉俊介が有望株。真横に滑るように変化するスライダーも武器となる。
攻撃陣のキーマンはトップバッターの石切山だ。ミート能力に長けて広角に弾き返す好打者で、出塁すれば50m走6秒1の俊足を生かして塁上を駆け巡る。そしてクリーンアップの鈴木、寺尾泉教(新3年=内野手)、岡庭龍汰(新2年=内野手)はパンチ力があり、打線が機能すれば大量点も見込める。
冬場は体作りに励み、各選手の体重も増加した。この春、トレーニングの成果を発揮するときが来た。「1勝するだけでなく、県大会に出て勝っていきたい」と石切山。限られた環境の中でスモールベースボールを磨き上げ、目標達成を果たす。

