〜 ①石垣 ⑩下重 ⑱佐藤 それぞれのセンバツ〜

10 下重賢慎 最速145キロの剛腕サウスポー
今春の選抜ベスト4進出の立役者だ。1回戦・明徳義塾戦、2回戦・敦賀気比戦で先発し会心のピッチングをみせた。最速158キロの本格派右腕・石垣元気が大会直前に左脇腹を負傷し1回戦での先発を回避したが、青栁博文監督は当初から下重に初戦先発を任せることを決めていた。背番号は10だったが、実質のエースだった。
北海道釧路市出身。中学時代にリトルシニア北海道選抜に選出されていた。そして下重のピッチングを視察した青栁監督が“オファー”を出した。下重視察時に、ゲーム終盤で登板したのが石垣だ。指揮官は、球威のあるボールを投げる石垣にも声を掛けた。下重視察がなければ石垣に出会うことはなかったかもしれない。中学時代の実績は下重が上だったが、健大高崎入学後は序列が逆になった。石垣は入学直後からベンチ入りし昨春の選抜では、石垣と佐藤龍月が全国制覇に貢献。その陰で下重は地道な努力を続けた。
昨秋の新チーム始動から頭角を現した。昨夏の群馬大会で絶対エース佐藤龍月が左肘を負傷し戦線離脱。下重は、石垣とのダブルエース体制で秋県大会制覇、関東大会準優勝で選抜切符をつかみ取った。「元気と龍月が活躍する中で次は自分がやらなければと思った」。そして明徳義塾戦で圧巻のピッチングを見せ、勝利にうれし涙。準決勝・横浜戦は3回1/3・2失点で降板。チームは1対5で敗れて連覇は果たせなかった。下重の頬には大粒の涙が流れた。選抜で流した“2つの涙”が下重をさらに進化させていく。

1 石垣元気 甲子園最速155キロをマークした主戦
昨秋の関東大会で最速158キロをマークしたドラフト候補が、選抜開幕前にアクシデントに襲われた。大会前の練習試合で左脇腹を負傷し、選抜での登板が危ぶまれた。結局、今大会ではすべて救援に。2回戦、準々決勝ではストッパーとしてマウンドに立つと、最速155キロのストレートを投げ込み打者をねじ伏せた。だが準決勝・横浜戦では4回途中から登板すると、ストレートを狙われて3失点、消化不良のまま選抜を終えた。球速No.1投手から真のエースへ。石垣は選抜の悔しさを糧に、最後の夏へ向かう。その先にプロの舞台が見えてくる。

18 佐藤龍月 昨年春の優勝投手が今春は代打で登場
昨春の選抜、そして昨夏群馬大会の胴上げ投手。最速146キロのストレートと伝家の宝刀チェンジアップを駆使する実戦派左腕。秀でたピッチングスキルに加えて投球術、胆力を備えており、トータル能力は世代トップレベル。だが、群馬大会後に左肘の負傷が発覚しトミー・ジョン手術を受けた。リハビリのため昨秋は欠場、今選抜は控え打者としてメンバー入りし代打で出場した。そして準決勝敗退の瞬間は、ベンチで悔しさをかみ締めた。投手としての復帰は5月以降の見込み。最強左腕は“最後の夏”の復活を目指して、調整を進めていく。