今秋の都大会ベスト8。
春・夏の躍進のプロローグ
今秋の都大会でベスト8へ進出した共栄学園。
「最強世代」の呼び声高い2年生を軸にしたチームは、秋の経験を糧にさらなる進化を遂げる。
(取材・伊藤寿学)
■ 接戦勝ち抜きベスト8へ
秋の進撃は、夏の進撃の序章にすぎない。
秋は1次予選から簡単ではなかった。
1次予選決勝は総合工科だったが実力校を4対1で下して都大会出場を決める。
今夏のメンバーが残っていたのは大きなアドバンテージ。
都大会では1回戦で南平、2回戦では成立学園を撃破して、3回戦へ。
成立に続いて甲子園経験のある堀越とのゲームだったが、エース清水一眞(2年=投手)を中心とした戦いによって4対2で粘勝、ベスト8へ駒を進めた。
■ 台風でグラウンドが浸水
大会中、予期せぬ事態に見舞われた。
台風の影響で江戸川沿いのグラウンドが完全浸水、ネットなどがすべて流されてしまったが、控え選手たちが復旧作業に尽力。
それによって試合メンバーは練習に専念することができたという。
4強入りを懸けた準々決勝は城東との東東京対決となったが、相手左腕投手を捉えきれずに4対7で惜敗、進撃は止まった。
岩元大威主将(2年=内野手)は「浸水後は控えの部員たちが流れたネットを探しに下流まで行ってくれたり、僕らの分まで頑張ってくれた。
試合に出られない選手のためにも勝ちたかったが、まだ力が足りなかった。
もう一度、チーム全員でチャレンジしていく」と話した。
■ 赤い旋風再び
共栄は2017年夏の東東京大会でベスト8入り、その戦いぶりは「赤い旋風」と言われた。
今年の2年生は、中学時代にその進撃をみて、入学してきた選手たち。
3年生は14人だったが、2年生は30人以上が切磋琢磨する。
岩元主将、エース清水、堤桂介(2年=内野手)らは1年生のときから実戦経験を積んできた。
この世代は、大きな期待がかかる「最強世代」。
それは選手たちも自覚している。
エース清水は「学校や地域から応援されるチームになって、僕らの代で東京のトップに立ちたい」と野望を持つ。
■ 指導改革でチームに変化
原田健輔監督は、今秋から指導方法を変えたという。
前チームの過去3回の都大会は春に1勝したのみ。
今夏の初戦敗退を受けて指揮官は、選手の自主性を高めるため、3つの事項を止めた。
一つ目は「厳しく叱ること」、2つ目は「終日練習」、3つ目は「朝練」。
選手たちに心の余裕と時間を与えることによって、選手たちは自分たちで空いた時間を活用し、考えて行動するようになっているという。
指揮官は「チームに手応えがありながらも勝てなかったので何かを変えないといけないと思った」と話す。
■ 秋の収穫と反省が糧
チームは、岩元主将、エース清水、堤の主軸のほか、捕手の渡邊英介(2年)、リードオフマン染谷心太(2年=外野手)、1年生の石黒颯人(内野手)らが土台を固める。
投手陣も清水に続いて、渡辺璃空(2年)、佐藤光真(2年)、北原史章らが力を伸ばす。
秋の収穫と反省を糧に、チーム全体のさらなる底上げが図れれば夢は広がっていく。
岩元主将は「自分たちの代で甲子園へいくために努力していく」と気持ちを込める。
赤い魂を宿した「最強世代」は、悲願の甲子園出場を成し遂げるために、虎視眈々と牙を研ぐ。
共栄学園高等学校
【学校紹介】
住 所:東京都葛飾区お花茶屋2-6-1
創 立:1938年
甲子園:なし
裁縫女子学校として設立、2003年共学化。
女子バレーボール部、バトン部は全国大会の常連。
野球部は2017年夏の東東京大会、2019年秋ベスト8。
卒業生に女子バレー元日本代表の益子直美など。