【指揮官インタビュー】青藍泰斗〈栃木〉青山尚緯監督 2025年夏甲子園出場 指揮歴2年目で35年ぶり甲子園へ導く
青藍泰斗 青山監督

指揮官Interview

青藍泰斗〈栃木〉
青山尚緯監督
指揮歴2年目で35年ぶり甲子園へ導く

「人としての成長の先に甲子園があった」

 今夏の栃木大会で35年ぶり2度目の甲子園出場を成し遂げた青藍泰斗。青山尚緯監督は2023年秋から指揮を任されて自身2度目の夏に甲子園切符をつかんだ。27歳で甲子園の舞台に立った若き指揮官に“夏の振り返り”を聞いた。

⚫︎選手たちが壁を打ち破ってくれた

―作新学院との決勝戦を振り返って?


「先制点が欲しかった状況で2回に1点先制できたのですが、4回に2失点して逆転されたのは誤算です。でも1対2で迎えた8回に佐川(主将)が同点タイムリーを打ってくれました。最後は延長タイブレークでの勝利だったのですが、キャプテン佐川、エース永井、攻守のキーマン鈴木たち中心選手がチームを引っ張ってくれたことが、甲子園につながったと思います。すべての選手たちが、持てる力を発揮してくれたと考えています」


―優勝旗を学校へ持ち帰ったときを振り返ると?


「決勝戦後に閉会式や取材対応などを終えて学校へ帰ったのは午後5時すぎになってしまったのですが、学校の先生、生徒、地元の方々が出迎えてくれました。35年ぶりに優勝旗を持ち帰ることができて、一つの恩返しができたかなと思っています。建学の精神である『質実剛健 至誠一生』に相応しい選手育成を心掛けてきた先に結果があったと思います」


―チームに地力があったのでしょうか。


「佐川には1年の秋からキャプテンを任せましたし、多くの選手が前チームから主力としてプレーしていましたが2024年秋、2025年春の2大会はベスト8止まり。僕自身の力不足もあり、結果が出ないもどかしさはありました。彼らにとっては最後の大会。結果的には2シーズンで積み上げてきた経験が、プラスに働いたと感じました。本当に頑張ってくれた世代なので、勝ちたいというよりも、選手たちに勝たせてあげたいという思いが強かったです」


―2023年秋の監督就任から2度目の夏で、チームを35年ぶりの甲子園へ導きました。


「僕の力ではなく、選手の成長が大きかったと思います。これまでも青藍泰斗はベスト4、決勝まで何度も勝ち進んでいましたが、最後の壁を乗り越えることができませんでした。足りないものは何だろうと考えたときに、『人間力』というか『人としての土台』の部分ではないかと感じました。野球は瞬時の状況判断が求められるスポーツなので、日常生活から『気付く力』を養わせたいと思っていました。選手たちがグラウンド外でも意識高く行動してくれたことによって、野球の質が向上していきました。今年の夏、選手たちはそれぞれが自分に“克つ”ことができたと感じています」


―選手たちとの距離感を意識していますか?


「僕自身が選手寮に一緒に住んでいるので、グラウンド、寮での“距離感”の差を意識しています。グラウンドでも寮でも、監督と一緒にいると選手たちの“逃げ場”がなくなってしまうと感じます。寮にも最低限のルールはありますが、グラウンドとは別でリラックスできる場にしたいと思っています。厳しい練習をしたあとでも、寮では“年の離れたお兄ちゃん”として優しく声を掛けているつもりです。グラウンドではスイッチオン、寮ではスイッチオフ。監督とお兄ちゃんの一人二役のイメージです」

⚫︎3年生の努力に感謝している

―優勝後は甲子園へ向けてどんな準備をしましたか?


「27日の決勝戦で優勝を決めたあとは嬉しさに浸る時間もないくらいでした。30日に関係各所に表敬訪問をさせていただき、31日には葛生駅から甲子園へ出発しました。8月1日に開幕戦のオンライン抽選が予定されていて、もし開幕カードになればさらに慌ただしくなるので、先に現地入りしていました。2日に甲子園練習で、3日は本抽選。青藍泰斗が甲子園へ行くのは35年ぶりで、誰も甲子園を経験していないので本当にあっという間の時間でした」


―甲子園では、デザインを刷新した青いユニホームが話題になりました。


「青いユニホームは、僕たち指導陣と選手たちで話し合って色やデザインを決定しました。昨秋から着ていたのですがベスト8だったので、(全国的には)それほど話題にはなっていませんでした(苦笑)。優勝したあとには甲子園規定のユニホームに新調しなければいけなかったので、本当に忙しかったです。青地のユニホームは、なかなかないので短時間での納品はメーカーさんも大変だったようです。開会式の前日にホテルに届けてもらい、甲子園で行進することができました。多くの方々の協力によってユニホームを着られたことに感謝しています。話題になっていたのでスタンドからの熱い“視線”を感じました」


―甲子園の舞台に立ってみて?


「自分自身も初めての甲子園だったので、一人の野球人として感動しました。大会前練習は観客がいなかったのですが、実際の試合ではスタンドが埋まって、一球一打に熱を感じました。佐賀北戦では選手はベストに近いプレーをしてくれたのですが、エース永井が緊張していて序盤に失点を重ねてしまいました。監督として言葉でリラックスさせてあげられれば良かったと感じました。4対5のサヨナラ負けでしたが、選手は精一杯のプレーをみせてくれたと思います。試合後は宿舎で、甲子園出場という目標を叶えた選手たちに感謝を伝えました」


―甲子園で得たものはありますか?


「3年生たちが甲子園への道を切り開いてくれたことによって、今の1、2年生が甲子園の景色を見ることができました。その経験が一番大きいと感じています。全国強豪を間近で見たことによって甲子園出場の“基準”やプレーレベルも感じたと思います。新チームは、多くの選手が入れ替わるので1からのスタートですが、選手たちの目標が『甲子園出場』から『甲子園で勝つ』に変わりました。3年生たちは、甲子園出場という結果以上に大きな財産を、青藍泰斗に残してくれたと感じています」

PROFILE
青山尚緯(あおやま なおい)
1997年群馬県出身。桐生市商―関東学園大。現役時代は遊撃手。高校・大学で主将を務めた。大学卒業後の2020年度に商業科教諭として青藍泰斗に着任。コーチ、部長を経て2023年秋から監督。2025年夏に甲子園出場へ導く。

おすすめの記事