春夏通算42回の甲子園出場を誇る伝統校
永遠のライバル・静岡商との「運命の一戦」
“夏2連覇”を狙う静岡の準々決勝の相手は、静岡商となった。
2020年9月号掲載
(取材・栗山司)
■運命の一戦へ
春夏通算42回の甲子園出場を誇る静岡。
甲子園は中止になったが、夏の県2連覇を目指し、代替大会ではチーム一丸のスタイルを貫いた。
2回戦では甲子園23勝の名将・永田裕治監督が就任した日大三島と対戦。
エース左腕の松本蓮(3年)が丁寧に低めを突いて完封を飾る。
3回戦は知徳、4回戦では三島南といずれも好投手を攻略し、ベスト8に進出する。
準々決勝の相手は永遠のライバル・静岡商となった。
7月5日の練習試合では7対6で勝利したものの、静岡商の最速148キロ左腕・髙田琢登(3年)の前にわずか1安打に抑えられていた。
チームは「髙田対策」として、打撃マシンで練習を重ね、運命の一戦に臨んだ。
■意地の粘り
初回に松本が先頭本塁打を浴びると、ミスが絡んで一挙3点を失う苦しい展開になる。
それでも3回、2死2塁のチャンスを作ると、2番・城航希(3年)が「繋いでいこうという気持ちだった」と、ライト前に弾き返す。
さらに4回にも1点を返し、1点差まで詰め寄る。
初回に3点を失った松本も徐々に立ち直る。
「チームに流れを持ってきたかった」と、4回には気迫溢れる投球で3者連続三振を奪う。
そして、最終回(7回)には2死から1番・神谷侑征(3年)が内野安打をもぎ取る。
しかし、反撃はここまで。
意地の粘りを見せたが、夏の2連覇の夢は潰えた。
■タスキを繋いだ夏
試合後、ベンチ裏で大粒の涙を流した松本。
「初回の3失点が全てだと思います。裏方としてサポートしてくれた3年生に申し訳ない気持ちで一杯です」と立ち上がりの失点を悔やんだ。
その上で「自分も髙田投手に負けないピッチャーになれるように、大学で活躍します」と最後は前を向き、球場を後にした。
昨秋の県大会ではベスト8で敗退。
栗林俊輔監督は「新チームの頃はなかなかチームとして噛み合わなかった」と話す。
県大会での敗戦をきっかけに、一人ひとりが大きく成長。
冬の間に努力を重ね、粘り強く戦うチームに生まれ変わった。
「コロナの影響で長い休校期間もあり、選手たちは心が折れそうになったこともあったと思うが、よく耐えて頑張ってくれた」と指揮官は選手を称えた。
新チームには身長189センチの長身右腕・髙須大雅(2年)、好打者の池田惟音(2年)ら、能力の高い選手が揃う。
主将の相羽寛太(3年)は「今日の負けの悔しい気持ちを持って、春の選抜甲子園に向けて頑張ってほしい」とエールを送る。
伝統校としてのプライドを見せた夏。そのタスキは確かに後輩に繋がれた。